良い知らせと悪い知らせがある

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ネタバレ・考察あり。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』レビュー

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筆者の厳選記事5選

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ここからはネタバレ記事です。

まだ鑑賞されていない方は、ページをスクロールしないことをオススメします。 

 

鑑賞前のかたはこちらへ。

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まず、ぼくは「ハリー・ポッター」シリーズを前日にざっと観た程度ですので、たとえば、「ハリポタでは必ずこういうシーンがある」とか「ハリポタではそれがお約束だ」みたいな「ハリポタのお作法」なるものがあるとすれば、それについてはよくわかりません。

よって記事では、ハリポッターシリーズの続編というよりも、1本の作品としての「ファンタビ」を評します。

以下、ファンタビを観て良かったところと、「改善すればもっと良くなるのでは?」と感じた「気になったところ」のまとめ。

 

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「ファンタビ」良かったところ

現実世界を反映した、ファンタビの世界観

現実世界のなかにファンタジーを混ぜ込んだ世界観の構築は、じつに見応えがありました。これが、ぼくがハリポタファンのみならず、ハリポタ初心者の大人にもファンタビをおすすめする理由の一つです。

ハリポタ過去作では現実世界と魔法世界は隔離され、ほとんど切り離されていましたが、本作では「現実社会に魔法や魔法動物がいたら、人間の暮らしはどのように変わるのか、どんな組織が立ち上がるのか」といった、現実とファンタジーの融合に成功しています。

たとえば、マクーザはFBIのような捜査機関として、アンチ魔法を掲げる新セーレム救世軍はKKK(白人至上主義)やファシズムのような差別主義者として、ファンタジーの中の現実に即した団体として描かれていますよね。

さらに、1920年代のアメリカが舞台なだけあって、たとえば缶詰工場で働くジェイコブは、経済発展による大量生産・大量消費時代の労働者であり、アングラな地下の酒場は、20年代のアメリカの禁酒法時代を反映しています。

こういったリアリティーがファンタジーとうまく融合しているからこそ、ファンタビが大人の鑑賞にも耐えうる(もちろん子どもも楽しめる)、普段ファンタジー映画を観ない層にも訴求できる作品となっているのでしょう。

映画的な完成度は非常に高いと言えます。

 

魔法動物の演出

パンフレットのデイビッド・イェーツ監督の言葉によれば、

みんなに徹底したのは、魔法動物たちは幻想的でなければならないが、幻想であってはならない、ということでした。アイデアを得るために、我々は、不可思議で美しくて素晴らしい動物たちが存在する自然界に、オーガニックな人類学上の参考資料をも求めました。

とあります。

つまり、「魔法動物はただの幻想の産物ではなく、自然界に存在する動物に即して作り上げられた」ということが言えるでしょう。

お話じたいが現実とファンタジーの融合に成功している分、魔法動物の歩き方、走り方、人間を目の前にしたときの表情、警戒する動きに至るまで、そこがズレてしまうと途端に白けてしまいます。

ファンタビは徹底して「魔法動物の演技」にこだわったようで、一見すると荒唐無稽な魔法動物も、どこか「実際にこういう動物がいたら、こういう動きをしそうだな」と、いちいち説得力があるんです。

ぼくがとても「良いな!」と思ったシーンのひとつに、スキャマンダーとジェイコブがトランクの中に広がる「魔法動物保護区」で動物の世話をするシーンがあります。

さまざまな環境に生きる魔法動物たちを、観客目線のカメラで長回ししながら、ぬる~~~っと移動していく。さながらUSJのアトラクションに乗ったかのようで非常に楽しめるシーンのひとつです。

 

大人向けの、おしゃれなラストシーン

ファンタビでぼくの涙腺を刺激してくれたのが、すでに鑑賞された多くの方も好評しているラストシーン。

もう少しクイニーとジェイコブが惹かれ合うような要素が欲しかったとは思いますが、あのラストシーンは実に「おしゃれ」ですよね。

「ノー・マジとはいえ、ジェイコブは特別扱いだよ!記憶は残してあげる!」というラストだったら、クソみたいにけなしていたと思います。

切なさだけで引っ張ってもよかったところを、ちゃんと魔法動物たちを登場させているのがまた憎い演出じゃないですか。

「ジェイコブの記憶はわずかでも残っているのか、思い出すことがあるのか」観客に判断をゆだねる幕引きは、非常におしゃれでグッド。このシーンだけで100点満点あげたいところです。

 

「ファンタビ」気になったところ

オブリビエイトとレパロすれば万事まるく収まるのか?

記憶を消去する「オブリビエイト」と、壊れたものを元に戻す「レパロ」で、破壊されたニューヨークの街は元に戻り、魔法を目の当たりにした人間は記憶を消される…というラスト。

ここがちょっと「うーん」と思ったところで、「都合の悪いことはリセットすればオールOK!」という風に捉えられかねないような…

便利な魔法で何でもかんでもなかったことにできるんだったら、過去の魔女狩りもなければ、新セーレム救世軍のようなアンチ魔法の組織も生まれてこなかったのでは。

もしかしたらこれは「ハリポタシリーズのお約束」なのかもしれませんが、ぼくは乗れなかったですね~

ただ、この「オブリビエイトルール」がなければ、感動のラストシーンもなかったわけですが。

 

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このなかに全然役に立ってない魔法動物がいまーーーす

サンダーバードのフランク、ボウトラックルのピケット、スウーピング・イーヴル、活躍してましたね~

とくにスウーピング・イーヴルは武器として使えて毒液で記憶も消せるという万能感。

じゃあ、光り物を盗んで回ってたニフラーは?セントラルパークの動物園を破壊したグラップホーンは?骨董品店を破壊したオカミーは?

いや、別に良いんですけどね。暴れただけの魔法動物がいても。

でも、それってスキャマンダーが自分の監督不行き届きの尻拭いをしただけだし、魔法動物がいたずらしただけとはいえ、人間側からしたら害獣被害じゃないですか。

さっきも書いたように、「そいつらの悪さまでリセットすればいいのかよ!」って思っちゃうんですよね。

だからこそ、クライマックスのバトルでニュートの魔法と魔法動物の活躍を描いて、「よくやった!お前らの悪さは帳消し!!」してほしかったなあと。みんな使えそうな能力持ってるじゃないですか。伸縮自在のオカミーとか、絶対ラストバトルで活躍するんだろうなあとか想像しちゃいましたよ。

 

というわけで、まとめ。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』

気になるところもありましたが、トータルで非常に良くできています。「ハリポタなんて子どもが観る映画」「シリーズ観てないから入り込めなさそう」という人ほど観てほしい。

2016年に公開された映画の中で、間違いなくTOP10に入る作品です!


 

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