良い知らせと悪い知らせがある

良い知らせと悪い知らせがある

本当に良い映画も、良くない映画もレビューします。

アニメ版と実写版、比較してみてわかったこと。映画『美女と野獣』の感想、レビュー。

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筆者の厳選記事5選

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こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。

公開から1週間おいて、ようやくディズニー・アニメの不朽の名作の実写化、『美女と野獣』を鑑賞してきました。

いま、本文を書き終わってこの導入部を書いているんですが...

僕のブログ記事の中では最大の文字数になりそうです。

それだけ、お伝えしたいことが多いってこと!

ではさっそく、レビューへとまいりましょう。

 

 

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映画『美女と野獣』

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美女と野獣|映画|ディズニー|Disney.jp |

【原題】Beauty and the Beast

【日本での公開】2017年4月21日

【上映時間】129分

【監督】ビル・コンドン

【脚本】スティーヴン・チョボスキー、エヴァン・スピリオトポウロス

【出演】エマ・ワトソン、ダン・スティーヴンス、ルーク・エヴァンズ

【あらすじ】進歩的な考え方が原因で、閉鎖的な村人たちとなじめないことに悩む美女ベル(エマ・ワトソン)。ある日、彼女は野獣(ダン・スティーヴンス)と遭遇する。彼は魔女の呪いによって変身させられた王子で、魔女が置いていったバラの花びらが散ってしまう前に誰かを愛し、愛されなければ元の姿に戻ることができない身であった。その恐ろしい外見にたじろぎながらも、野獣に心惹(ひ)かれていくベル。一方の野獣は……。(シネマトゥデイ)

映画.comの評価平均点 4.1 点 / 評価:168件

Yahoo!映画の評価平均点 4.42 点 / 評価:1728件

Filmarksの評価平均点 4.2点

僕の評価は100点中 60点

 

さすがディズニー期待の新作といいますか、ディズニーが「今年もっともヒットさせたい」という気持ちの現われがよく出てましたね。

各レビューサイトも軒並み高い評価がされています。

僕のざっくりとした感想は...

「『美女と野獣』の実写版は、アニメ版を超えられなかったかあ」です。

2015年に実写版『シンデレラ』が公開されましたが、あれは僕の中でディズニー実写版映画最高傑作でしてね。

あまりにも好きすぎて、わざわざ記事を1本こしらえたほどです。

【関連記事】人はあまりにも美しいものを観ると涙する。ディズニー実写版『シンデレラ』考。

実写版の『シンデレラ』は、アニメ版を超えていましたが、実写版『美女と野獣』はというと...「あなたのことはそれほど」というのが正直な感想です。

 

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本作を観る前に...

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実写版を観た後でもいいんですが、1995年のアニメ版『美女と野獣』を予習がてら観ておくといいかもしれません。

アニメ版に忠実かと思いきや、けっこう思い切った追加要素や、まるまる端折られたシーンもあります。

気づいた点をいくつか挙げておくと...

実写版の追加要素

  • ベルの母親のエピソード(ベルの出生のひみつ)
  • ガストンの相棒、ル・フウがゲイ
  • 魔女の「世を忍ぶ仮の姿」がキーパーソンとして登場する
  • 追加アイテム「魔法の地図帳」

実写版で端折られた要素

  • モーリス(ベルの父親)が発明家
  • チップくんがこっそりベルの家に行く
  • モーリスを施設に連れて行こうとする悪者が出てこない

鑑賞中にいろいろと気づくのも映画の楽しみのひとつだと思うので、実写版を観る前、あるいは観た後に、一度アニメ版を鑑賞されることをオススメします。

ちなみに、吹替版のキャストの皆さんの演技、とても良かったですよ。僕が吹替版で気になった点は別のところに...

以下、ネタバレを多分に含みますので、まだ鑑賞されてない方はUターンをおすすめ。

 

実写版のキャラクターについて個人的な感想

実写版に登場するキャラクターたちについて、アニメ版と比較しながら、個人的に感想を述べてみたいと思います。

ベル(エマ・ワトソン)

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歳を重ねてますます美しくなっている。スクリーンに映し出されると、パッと目を惹く華やかさがある!

ただ、ベル役としては「華がありすぎる」んですよ。僕は予告の時点からずっと「コレジャナイ」感を抱いてました。

僕の中でのベルって「田舎に埋もれてる美しい娘」というイメージなんですね。でも、エマ・ワトソンにはどうしても都会的なイメージを持ってしまうし、エマ・ワトソン得意?の「左の口角を上げる表情」が出ると、「あ、やっぱり違うな」と。もっと「田舎臭え女優出してこいよ」と。

左の口角を上げる表情。チャーミングではあるんですが...

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「じゃあ、エマ・ワトソン以外にだれが入るのよ?」って言われると、うーん。

ジェニファー・ローレンスか、20代の頃のナタリー・ポートマンあたりかなあと。スター性、話題性で見ても、比肩する女優は彼女たちくらいですかねえ。

とは言え、『美女と野獣』の舞台がフランスであること、ティズニーが実写版『美女と野獣』で積極的にLGBTの要素を取り入れた?と考えると、フランス生まれで、かつUNウィメン(女性の地位向上を目的とした国連の組織)の親善大使であるエマ・ワトソンに白羽の矢が立ったのも頷けます。

野獣(ダン・スティーヴンス)

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ダン・スティーヴンスの素の顔が拝めるのはラストしかないので、ここでは野獣の造形について。

僕ね、アニメ版の野獣のデザインが大好きなんですよ。醜い姿でありながらも、どこか愛らしさのある、あのデザインね。

実写版は、特徴的な下顎の牙がないし、角の向きも逆。「そもそもまったく別ものじゃないか...」という感想です。エマ・ワトソンのベル以上に乗れなかった...

さらに言うと、やっぱりフルCGで描かれた野獣は違和感ありました。いくら『ジャングルブック』で少年以外の動物をCGで書いたとはいえ、です。

むしろ、古き良き?特殊メイクで良かったんじゃないかな?くらいに思います。中の人は2mくらいの俳優さん持ってくればOK。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラックス役でおなじみ、デビッド・バウティスタあたりならイケたっしょ。

プロレスラーの肩書もあるデビッド・バウティスタ

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ガストン(ルーク・エヴァンス)

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ゲイをカミングアウトしているルーク・エヴァンスを持ってきているところは、さすがというか。本作の中ではベストキャスティングだと思ってます。

もちろんLGBTの観点だけでベストキャスティングってわけではなく、ガストンの粗暴で単細胞で小憎たらしく、女にモテそうなんだけどル・フウをはべらせる懐の深さ?も見事に演じきってますね。

実写版でゲイ要素が強化されたガストンの相棒(愛棒?)ル・フウを演じたジョシュ・ギャッドもよかった。さすが『アナ雪』のオラフの声優さん。

イアン・マッケラン(コグスワース)

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魔法で置き時計に変身させられていたコグスワースを演じたのは、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのガンダルフでおなじみイアン・マッケラン。

登場シーンこそ少ないものの、いやいや、お元気そうな姿を見られただけで何より。

そういえば彼もゲイをカミングアウトしてますよね。如何にディズニーが実写版『美女と野獣』でLGBTに切り込んでいったかがうかがえます。

 

実写版『美女と野獣』の良かったところ

では、全体の感想を行きましょう。まずは良かったところから。

僕はアニメの吹替版が大好きなので、実写も日本語吹替えで観ました。

悪くなかったですよ、日本語吹替版。

次は字幕版でも観てみたいと思っています。

オープニングのシンデレラ城が...

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今回は「ビーストの城」になっていました。ディズニーはたまにこういうのやるけど、ニクい演出ですねえ~

オープニングから否応なく期待感を高められました。

アニメ版のファンには嬉しい、実写キャストによるアニメの再現

今回の実写版、けっこう細かいところまでアニメ版を再現しているところは、アニメ版が大好きな方にとっては非常に嬉しい要素じゃないかなあと思いますね。

とくにキャストが歌う歌謡シーンは、本作でもかなり力が入っているようで。

たとえば「朝の風景」「ベルのひとりごと」なんかの歌謡シーンは、映像の再現度高し!心憎い演出に思わず涙がこぼれる瞬間も...

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ただし... 吹替版の「歌詞」については、言いたいことがなくもない。

ル・フウにゲイ要素を取り入れた点

ビル・コンドン監督がインタビューでゲイのキャラクターが登場することについて語っています。詳しくはそちらで。

www.cinematoday.jp

これは観た人によって賛否別れるところかなあと思います。アニメ版にはなかった追加要素ですからね。

僕個人としては、面白い試みだと思いました。本編を邪魔するようなノイズにもならなかったし。

それに、ゲイ要素といっても、ゲイをバカにしているわけではないし、そもそもコンドン監督自身がゲイをカミングアウトしてますから。

製作者の都合によってかどうかわかりませんが、ゲイに寄り添ったキャラクターとして登場したル・フウ、僕は非常に好感が持てましたね。

バラの花びらが落ちる演出

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『美女と野獣』のキーアイテムといえば、王子に野獣の魔法をかけた魔女が残していったバラです。

花びらが全部散るまでに「真実の愛」を見つけなければ、魔法が完全なものとなってしまい、元の姿に戻れなくなってしまう...というアレ。

実写版では、バラの花びらが散ると、城の一部が崩れ落ちていくという演出が追加されています。

この演出によって、「魔法が完全なものになるまであとわずか」という緊迫感と、「人々の記憶から、城と王子のことが忘れ去られていく」という悲愴感が、みごとに表現されています。

細かいところではありますが、残された時間はあとわずかという「タイムリミット」感
がよく出てて、ナイスな追加要素だと思いましたね。

「真実の愛」は間に合わなかったのか!!

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王子がビーストに変身させられたのと同じく、召使いたちも魔女の魔法によって、城の調度品に変身させられますね。

そんな彼らのドタバタも『美女と野獣』の見どころなわけですが、実写版ではちょっとだけ彼らの描写が追加されてまして。

それが、「(タイムリミットまでに)真実の愛は間に合わなかったのか!!」

ラストの手前、魔法が解けずに人格を失っていく(身も心も調度品になってしまう)召使いたちのシーンが追加されています。

実写版のビジュアルが僕の好みでなかったため、たいして思い入れもなかった召使いたちなのに、どこか悲しい。胸に迫るものがありましたねえ。

これもナイスな追加要素。さすがにここは泣いちゃったなあ...

 

実写版『美女と野獣』の残念だったところ

次に、個人的に実写版『美女と野獣』の残念だったところをピックアップしていきます。「良かったところ」よりは多め...

ベルの母親にまつわるエピソード

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実写版の大きな追加要素のひとつが、ベルの母親についてのエピソードです。

ベルの母親はベルを産んだ直後に黒死病(ペスト)にかかり、モーリス(ベルの父親)と赤ん坊のベルに感染しないよう、隔離されたまま死を迎える、という悲しい過去が明らかとなるわけですが...

これねえ... 正直、いらなかったように思います。

このエピソードがあったからと言って、感動が倍増したかと言ったらそうでもない。

アニメ版で「頭がおかしい」とされていたモーリスが、実写版のこの追加要素で、さらに惨めなじいさんになってしまった...という感じがするんですよね。

 

さらに、この追加要素のために新たに追加された「アイテム」がありまして。

地図に触れたものをどこでも好きなところに運んでくれるという「魔法の地図帳」。ドラえもんのひみつ道具で言うところの「どこでもドア」みたいなアイテムです。

これが、実写版のみの「魔女が王子に残していったアイテムのひとつ」として登場します。

...ん?

アニメ版では、魔女が残したアイテムに「魔法の鏡」がありましたね。防犯カメラよろしく、思い浮かべた人の姿が鏡に映し出されるというアイテムです。

それだけでも「なんて気前のいい魔女なんだ」と思うんですが、さらにアイテムが追加されるとなると...

「さすがに贈り物しすぎだろう」とツッコまざるを得ない。

追加エピソードと追加アイテム、僕の目には蛇足要素として映りました。残念ながら。

ウイッグとおもしろメイクのギャグ、こすりすぎ

たぶん観た人ならだれもが感じたと思います。3回も出されるとさすがに食傷気味になる。

そういうとこ、アカンとこやでキミ。

日本語吹替版の歌詞差し替え問題

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まだ日本語吹替版でしか観てないのですが、吹替版ならではの残念なところがありましてね。

まず「一部の歌詞がアニメ版と違う」ところが気になったのは、個人的には大きなマイナス要素です。気づかなければ全然OK。

リップシンクのために差し替えられたのかわかりませんが、アニメ版ではお歌のシーンだけで涙腺がちぎれるくらい泣いちゃうのに、実写版のお歌のシーンは「あれ?こんな歌詞じゃなかったよなあ...」という戸惑いが先行してしまいまたね。まったく入り込めない。

とくに、中盤のクライマックスであり、涙腺キラーである「美女と野獣」のお歌のシーン。歌詞の差し替えはもちろん気になったんですが、それよりも僕の大好きな「ちょっとした多幸感を味わえるシーン」がない!!

それは、ポット夫人があくびするチップくんに「食器棚へおゆき。もう寝る時間よ」とやさしく語りかけ、おやすみのキスをして送り出す。

チップくんがダンスホールを出ていくところで、ドアのスキマからちょっとだけ顔を覗かせる...という一連のシーン。

これね、超大事なシーンですから!

「帰るまでが遠足」と言うのと同じように、「チップくんがドアのスキマからちょっとだけ顔を覗かせるまでが『美女と野獣』のダンスシーン」なんですよ!

幼さゆえに「真実の愛」というものを知らなかったチップくんが、ベルとビーストの仲睦まじい姿を見て、彼なりに「これが『真実の愛』なのかも」ということを悟る...それを暗示させるのが、あのチップくんの笑顔なんですよ。僕の勝手な解釈ですが。

そこをバッサリとカットするというのはねえ...個人的にはかなりのマイナス点なのであります。

実写ゆえのナマナマしさ

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どうしてもアニメ版と比較しながら観てしまうのですが(というより、そうやって観るのも楽しみ方の一つ)、「アニメでは気にならなかったのに、実写にすると妙にナマナマしいな」と思うところが多々ありましてね。

例えば、先ほどちょっと触れましたが、「頭がオカシイ」とバカにされているベルの父親モーリス、ベルに執着しすぎて周りが見えなくなっているガストン、さらにそのガストンにそそのかされて野獣の城を急襲する村人たち...

アニメ版ではとくに気にならなかったこれらの要素が、実写版で生身の人間が演じると、途端にナマナマしくなるというか、「常軌を逸してる」「こいつら、頭おかしい」感がダイレクトに伝わってきましてね。

「何か、観ててツライなあ」なんて思ってしまいましたよ。

僕の中でベスト・オブ・ディズニー実写版映画であるところの『シンデレラ』では、まったくそういう感情は湧いてこなかったんですけどねえ...

 

というわけで、まとめ

気づいたら5000字以上書いてました。

アニメ版と実写版、比較してみてわかったこと...

最初にも書きましたけど、アニメ版『美女と野獣』って、本当に傑作なんだなあってことです。

ただまあ、僕はラストでビーストがもとの王子の姿に戻るのって、ちょっとばかり寂しい思いもするんですけどね。

 

さて、実写版については、そのうち日本語字幕版も観に行くつもりなので、もしかしたら字幕版を観た上でさらに追記するかもしれません。

なんだかんだ言って、好きな作品になると文字量も熱量も大きくなっちゃいますね。

というわけで、ゴールデンウイークにも入ったことですし、ぜひ劇場にて。

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