映画『ワンダーウーマン』感想とレビュー。「一人で眠れない女」も、「美しく、ぶっ飛ばす」もない
こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。
今回あつかう映画はDCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)の4作め、待ちに待った『ワンダーウーマン』でございます。
いつもの立川シネマシティで、公開初日の初回で観てきました。
平日にもかかわらず、一番大きなシネマ・ツーのa studioがほぼ満席。
若いカップルから熟年のご夫婦まで、幅広い客層で埋められていたのが印象的でした。
日本でのプロモーションが噴飯モノだったらしいですが、映画本編は果たして。
- 映画『ワンダーウーマン』
- ガル・ガドットは「イスラエルの至宝」
- クリス・パイン史上最高のクリス・パイン
- カルチャーギャップコメディの面白さよ
- 戦神アレスに一同「おまえ誰だよ!?」
- トレバー隊よ、個性を活かせ!
- クライマックスはやっぱりそうなっちゃうよねえ
- 「ひとりで眠れない女」も、「美しく、ぶっ飛ばす」もない
- というわけで、まとめ
映画『ワンダーウーマン』
公式サイト:http://www.spiderman-movie.jp/
【原題】Wonder Woman
【日本での公開】2017年8月25日
【上映時間】141分
【監督】パティ・ジェンキンス
【脚本】アラン・ハインバーグ
【出演】ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライトほか
【あらすじ】人間社会から孤立した女性のみの一族のプリンセスとして生まれたワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、自分が育ってきた世界以外の環境を知らず、さらに男性を見たこともなかった。ある日、彼女は浜辺に不時着したパイロットと遭遇。彼を救出したことをきっかけに、ワンダーウーマンは身分を隠して人間社会で生活していくことにする。(シネマトゥデイ)
Yahoo!映画の評価平均点 3.68点
Filmarksの評価平均点 3.9点
僕の評価は100点中 60点
観る前はかなり楽しみにしていました。
前評判も良かったし、なにより『バットマンVSスーパーマン』のワンダーウーマン登場の衝撃といったら。
それで公開初日に喜び勇んで観に行った結果、僕の感想は......
ガル・ガドットが息を呑むくらい美しかった。
クリス・パインが今までで一番良かった。
それ以上でもそれ以下でもない。
たしかにねえ、多くの感想が「ワンダーウーマン美しい!可愛い!」「今回のアクションすごい!」の一辺倒なんですよ。
内容の良し悪しに振れる感想はわりと少数派というか。
同じDCEUの『スーサイド・スクワッド』と似たような現象ですね。
「ハーレクインがエロくて可愛い」という感想しかない、という……
それでも、楽しいところは楽しかったし、ベタだけど涙を誘うシーンもありました。
劇中のある人物の「僕は今日を救う 君は世界を救え」は、映画史に残る名言だと思いますし。
ではでは、感想・レビューへとまいりましょう。
ガル・ガドットは「イスラエルの至宝」
どの映画ブログでも必ず言及されてるでしょうから、手短に。
ガル・ガドットが美しい。
しかも二児のママでイスラエル軍の兵役に服してたんだもの。
ご本人こそがワンダーウーマンですよ。
どんなに暗い場面、凄惨な場面でも、彼女が登場するだけでスクリーンがパッと華やかになる。
隣に座っていた女性が、ダイアナの初登場のシーンで思わず「わぁ……」ってつぶやいてたくらいですから。
登場するだけでうっとりしちゃうような女優さんなんて、何年ぶりだろう。
『007 カジノ・ロワイヤル』でもおなじみマッツ・ミケルセンを「デンマークの至宝」と言うそうですが、だったらガル・ガドットは「イスラエルの至宝」ですね。
あのナタリー・ポートマンを生んだ美人大国イスラエルの至宝ですから、そりゃあ女神級ですよ。
クリス・パイン史上最高のクリス・パイン
これも多くの方が言及されてますが、『ワンダーウーマン』のクリス・パインは、史上最高のクリス・パインでした。
よくネタにもされてますけど、クリスと名のつく売れっ子ハリウッド俳優は4人。
クリス・プラット
クリス・エヴァンス
クリス・ヘムズワース
クリス・パイン
そのなかでもクリス・パインは……
まあMCUの世界的大ヒットもあって、どちらかと言うと「クリス四天王」の四番手でしょうか。
僕自身そんなに「クリス・パイン大好き!」 みたいなこともなくて、他の3人に比べて地味な印象でした。
それで今回の『ワンダーウーマン』にトレバー大尉として登場したクリス・パインは……
クリス・パイン史上、最高のクリス・パインでした。
『スタートレック』のカーク船長の何倍も魅力的!
国のために命を捧げる崇高な軍人でありながら、おちゃめでロマンチストな一面もあるトレバー大尉を見事に演じていましたね。
間違いなく当たり役!
カルチャーギャップコメディの面白さよ
『ワンダーウーマン』は大きく分けると3部構成なのかなと。
1、アマゾン族の聖地セミッシラ編
2、ロンドン編
3、最前線編
そのなかでも、カルチャーギャップコメディとしても楽しめる「ロンドン編」は、これまでのDCEU作品にはない面白さ、笑いどころがありました。
ガル・ガドットの美しさと可愛らしさが臨界点を超えるファッションショー、ツッコミ役のエッタとトレバー大尉のやりとり。
何よりもダイアナとトレバーのムズキュンシーンに、ニヤニヤが止まらない!
ここだけを切り取れば、もう至福ですよ至福。
まだご覧になっていない方の期待を煽る、内藤哲也選手の言葉がこちら。
この「一服の清涼剤」のようなコメディーシーンがあるからこそ、後半からの凄惨な「最前線編」がグッとくるんですけどね。
ただまあ……ちょっと残念なところもチラホラと。
以下、ネタバレも含みます。
戦神アレスに一同「おまえ誰だよ!?」
本作の一番の問題じゃないでしょうかねえ。
ラスボスとなる戦神アレスの正体、おそらく観ていた人の多くが思ったはず。
「おまえ誰だよ!?」
『ファイナルファンタジーIX』のラスボス「永遠の闇」が登場したときの心境に似ているかと。
もちろんね、戦神アレスが誰かに化けて潜んでるのはわかるんですけど、なぜお前なんだと。
これって、映画観ててシラケる「実はあのときこうだったんじゃ」「実はワシが◯◯だったんじゃ」っていう、後付けパターンじゃないですか。
さらに言うと、なぜ最前線にいるのかと。
もっと丁寧に伏線を張ってほしかった……あまりに唐突すぎるんだもの。
まあたしかに「なんでこのジイさんはトレバーたちに協力的なんだろう?」とは思いましたけど、まさか戦神アレスだとは1ミリも思わなかったし、1ミリも疑わなかったからこそ返って「急に出てきてお前なんだよ!」ってなっちゃったですよねえ。
パトリック卿(正体はアレス)が初めてダイアナを観たときにいぶかしげな顔をしていたような気もするけど、あれで伏線とするには印象が薄すぎる。
たとえばダイアナがロンドンの会議場に初めて姿を現したときに、「人間じゃない何者かがいる」みたいな反応をしてくれれば、もう少し伏線にはなったかも。
そういうのが観客にほとんど示されず、いきなり終盤に取ってつけたような登場の仕方をするからポカーンとしてしまう。
「実は裏でドイツ軍と暗躍してましたと」か、目に見えて悪そうなことしてくれないと、アレスである必然性も、戦場の最前線にいる必然性もないんですよね。
そういうのも「だって神様だもーん」で済まされちゃうとモヤモヤするんですけど。
もうひとつツッコんでおきたいおきたい点としては、戦神アレスが鎧をまとった姿ですね。
ギリシア神話を題材にしたゲームや映画に触れたことのある人なら、思ったんじゃないでしょうか。
「アレスというよりハーデスじゃねえか」
僕はアクションゲームの『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズが好きなもので、アレスの鎧姿が冥王ハデスに見えてしかたなかったですね。
ちなみに、『ゴッド・オブ・ウォー』の冥王ハデスはこちら。
トレバー隊よ、個性を活かせ!
トレバー大尉とその仲間たち。
個性的なキャラクターたちが揃ってましたが、もっと個性を活かしてほしかったなと。
活躍したのは多国語を操るサミーアくらいかな。運転手に扮して検問を突破するシーンは面白かった。
でも、それ以外のキャラクターはというと……
たとえば狙撃手のチャーリーは、ここぞというときに射撃ができない。
だったら、最後の最後に『ダイ・ハード』のパウエル巡査並の感動シーンを持ってくることもできたのではないか。
もっと勿体無いのはトレバー大尉の秘書・エッタ。
あんなに面白いビジュアルとキャラクターしてるのに、カルチャーギャップコメディのツッコミ役だけで終わるとは。
中盤から彼女はパトリック卿(アレスの人間体)と一緒に残るわけじゃないですか。
アレスの正体に気づき、トレバーに連絡することもできたんですよ。
そんな大仕事を任せてもよかったのに、中盤以降これといった活躍の場が与えられなかったのは本当に勿体無い。
クライマックスはやっぱりそうなっちゃうよねえ
登場するだけでスクリーンに華やぐ、ワンダーウーマンのアクションシーンはどれも素晴らしかったのですが、クライマックスがねえ……
『マン・オブ・スティール』のときもそうでしたけど、やっぱり超人同士が戦うと戦闘力のインフレが起きてワンパターン化してしまいますよね。
相手の必殺技よりも強力な必殺技で倒す。
『ドラゴンボールZ』なんかでありがちなパターンです。
「クリリンのことかーーー!!」じゃないですか、ワンダーウーマンの覚醒って。
やっぱり、勝つには勝つなりのロジック「なぜ勝てたのか」「何が原因で(敵側が)負けたのか」がほしい。
「ゴッドキラーはお前だから」は確かにそうなんだけど......
「ひとりで眠れない女」も、「美しく、ぶっ飛ばす」もない
公開前の炎上騒動?について思うところを。
『ワンダーウーマン』の日本版イメージソング、乃木坂46の「女は一人じゃ眠れない」の歌詞が、「秋元!お前本編観てないだろ!」レベルのまったく的外れだったことで炎上。
これはもう多くの映画人が批判してましたし、観る前から想像が付いていたことですが……
もちろん、一人で眠れない弱々しい女は一人たりとも出てきませんでした。
さらに、実際に本編を観てもうひとつ確信したことがあります。
キャッチコピーの「美しく、ぶっ飛ばす」も的外れ。
ガル・ガドットという、イスラエルの至宝が演じるヒーローだからって、「美しく、ぶっ飛ばす」ってコピーはあまりに安直にすぎる。
これはアクションが「美しくない」「汚い」というわけではないですよ。
ガル・ガドット演じるワンダーウーマンはそりゃあ美しかったですし、パティ・ジェンキンス監督の女性監督ならではの視点で描かれる、スーパーヒーローの姿も新鮮でした。
でも、映画の舞台は第一次世界大戦の最前線、兵士が酷い死に方をする場所。
『ワンダーウーマン』にも、戦傷によって手足を失い、戦闘ストレス反応を引き起こす兵隊たち、毒ガスで殺される無辜の民が大勢出てきます。
そんな凄惨な戦場で戦うワンダーウーマンを観て、「美しく、ぶっ飛ばしてんなあ」と痛快さを感じるシーンはひとつもなかったですね。
かっこいいし、美しいんだけど、ワンダーウーマンの戦いには悲痛さすら感じました。
彼女がどれだけドイツ軍をぶっ飛ばそうが、人間は戦争を止めないから。
後半は『ダークナイト』に匹敵するくらのダークさがあったと思いますよ。
キャッチコピーは日本の観客に訴求するために、文字通り「キャッチーな」コピーであるべきなんでしょうけど、一時期の「全米が泣いた」レベルの、残念なコピーが未だにまかり通ってるのは如何ともしがたい。
というわけで、まとめ
間違いなくスクリーンを縦横無尽に駆け巡るガル・ガドットは美しい。
クリス・パインは彼のキャリア史上最高の仕事と言えるくらい、トレバー大尉は魅力的だった。
たしかにこれまでのDCEU作品の中では飛び抜けて面白かった。
もどかしいところは数々ありますけど、それをカバーして余りあるガル・ガドットの美しい戦さ姿で、十分に元は取れるんじゃないでしょうか。
3ヶ月後にはいよいよ『ジャスティス・リーグ』が公開ですし、『ワンダーウーマン』単体での続編も予定されているとのこと。
DCEUのアクションとストーリーの進化、どっちも気になるからこれからも観に行きます。
観てなくても楽しめるけど、鑑賞自体はオススメ
ハーレクインがとにかくエロくて可愛い