良い知らせと悪い知らせがある

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本当に良い映画も、良くない映画もレビューします。

『ポッピンQ』レビュー。プリキュア弱者の30代男性が少女たちの頑張りに泣いた。

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筆者の厳選記事5選

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こんにちは、もとむらはじめ(@motomrahajime)です。

 

前回の記事では盲目の老人が強盗を蹂躙する新感覚のホラー映画『ドント・ブリーズ』をレビューしましたが、今日はうってかわって主人公が中学3年生の美少女!

「プリキュア」でおなじみ東映アニメーションが60周年に送り出したこの映画。

『ポッピンQ』でございます。

劇場アニメ「ポッピンQ」 | 公式サイト

www.youtube.com

あらすじ

中学3年生の春、
悩みを抱えた少女たちが、奇跡の出会いを体験する。
住んでいる地域も、家庭環境も違う5人。
出会うはずのなかった彼女たちが、出会い、そしてぶつかりあう。
それは、それまで目をそらしていた自分の心と向かい合うこと。

 

以前、筆者がレビューした映画のなかに『劇場版 艦これ』がございまして。まあこれが「提督」の方々から非常に評判が悪くてですね。

詳しくはこちらをご覧ください。


そりゃあアニメ全話観ても、どの艦むすにも思い入れることもなかった提督落伍者が提督接待映画観たってしょうがないんでしょうが、それを抜きにしてもひどい映画でした。まあ分厚い提督補正のかかったメガネをかければ、キャラ萌えだけで満足できたんでしょうが。

ただ、記事の方では素晴らしいコメントをたくさんいただきましたので、観たことは公開してませんよ、全然。


それはともかく。『ポッピンQ』も同じく美少女が主人公で、客層の9割が『劇場版 艦これ』と同じ濃いい大人のおともだちで(いちおう親子で観に来てるお客さんもいた)、散々なレビューを書くことになるだろうなあと思っていたんですが...

では、レビューへとまいりましょう。

 

筆者は「戦隊モノ」で理解した

まず筆者は「プリキュア」をまともに観たことがなくてですね。そのルールとかお約束みたいなことはまったくわからなかったんですよ。ただなんとなく『ポッピンQ』は東映アニメーションの作品だから、「プリキュア」っぽいんだろうなあくらいで。

おそらく、『ポッピンQ』に登場する5人の女の子のポジションは、それぞれプリキュアに登場する女の子のポジションに類似してたりしたんでしょう。

ただ、筆者にはそれがわからんので、便宜的に「戦隊モノのカラーに照らし合わせる」ことで、『ポッピンQ』の女の子たちのポジションを理解できましたよ。

それぞれ簡単に紹介しましょう。

 

小湊伊純

 

実質、本編の主人公。陸上部の中学3年生。戦隊でいうとレッドのポジション。明るい、負けず嫌い、単細胞といった性格。


日岡蒼

学業優秀な中学3年生。戦隊でいうとブルーのポジション。冷静、面倒くさがり、同調を嫌うといった性格。レッドと張り合うことが多い。


友立小夏

 

ピアノが得意な中学3年生。戦隊でいうとイエローのポジション。おっとり、マイペース、ムードメーカー。


大道あさひ

 

合気道を学ぶ中学3年生。戦隊でいうとグリーンのポジション。おとなしい、自己主張が苦手、意志が強い。


都久井沙紀

 

ダンスが得意な中学3年生。戦隊で言うと6人めの戦士のポジション。敵か味方かわからない。協調性がない、最初から戦闘力(『ポッピンQ』でいうとダンス力)が高い、コミュニケーションが苦手。


戦隊モノの年代や作品でカラーの違いも出てきますが、ざっとこんな感じで。さすが東映と言うべきか、意外なほどに「戦隊的」なキャラ分けがされていましたね。

「プリキュア」弱者でダンスもさほど詳しくない筆者でも、『ポッピンQ』をひとつの「美少女戦隊シリーズ作品」として観るとそこそこ理解ができましたよ。

本作のキャラクター原案を担当された黒星紅白さんの絵は可愛いし、スクリーンのなかで動く彼女たちを見るだけで、筆者はずっと多幸感に包まれておりました。

 

良かったところ

主人公の伊純に感情移入

何より本作の主人公である伊純ですよ。

 

中学3年生で陸上部の女の子。この子の存在は大きかった。というのも、筆者は中学高校と陸上部に所属しておりまして、伊純と同じく部活内に負けたくないライバルがいたのもあって、非常に感情移入できるキャラクターだったんですね。

冒頭で描かれる伊純の日常風景が流れただけで、筆者はもう目頭が熱くなってしまいまして... 中盤、敵のアジトで100mを駆け抜けるシーンは、思わず「伊純ちゃんファイトォォーーー!!」と野太い声を挙げそうになりました。

 

ちなみに、陸上部らしいレビュー?をすれば、伊純の女子100m自己ベストである11'89は、中学女子の歴代日本記録10傑に入る大記録です。

meisui.sakura.ne.jp

もし伊純の両親が陸上競技に理解のある人たちなら、女子短距離の超名門校である埼玉栄高校あたりに入学させてたんじゃないのかなあ~などと思ったりもしましたけどね。

 

アクションも楽しめた

さすが「プリキュア」の東映と言うべきか、少ないながらもアクションシーンは注目ポイントのひとつ。

とくに伊純が自分の能力に気づいてクラウチングスタイルを取ったシーンは、先に書いた感情移入補正もあって、最高にアガりましたね~ もちろん、100mの吊橋を全力疾走するシーンも。

蒼と小夏の能力にはいささか「?」と思ったところがなくもないんですが、それでもラストバトルの連携プレーはよかったし、後述のダンスシーンに比するレベルの流麗な動きは観ていて気持ちがいい。

何より、少女たちの頑張りに意外なほど心がわしづかみにされました。

 

さすがのダンスシーン

www.youtube.com

ご存知の方も多いのでは、と思いますが、『ポッピンQ』の監督はこれまでにプリキュアのダンス映像を手がけてきた宮原直樹氏。

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筆者が以前勤めていた会社の、プリキュア狂いのグラッフィッカ―さんがおっしゃってたんです。「プリキュアのダンスは神がかっている」と。

その宮原氏によって描かれるダンスですから、もう見事と言う他はない。CGで簡単に動かしているように見えて、実はとんでもない技術が駆使されたダンスシーンなんです。

劇場版「プリキュア」のダンスシーンをまとめたメディアも発売されているくらい。

 

 

とくに「訓練を経た上手なダンス」よりも、「まったく息の合っていない下手くそなダンス」を表現するのって、非常に手の込んだことをやっていると思うんですよ。

「ダンスパート以外のキャラクターのルックと、ダンスパートのキャラクターのルックがちゃんとシンクロしている」というのは、非常に驚異的なことなんですよね。

バックミュージックも良くて、筆者はすべてのダンスシーンを目頭を熱くして堪能することができました。

 

残念だったところ

【ネタバレ】沙紀の描き込み不足

『ポッピンQ』のもうひとりの主人公とも言える沙紀。個人的には中盤、沙紀が森の中でひとりでダンスをひとさし踊るシーンは神々しさすら感じて涙しちゃったぐらいなんですね。

ラスト付近までまったく協調性を見せず、あまつさえ敵の親玉に加担するという、まさに「戦隊6人めの戦士」的な立ち位置のキャラでしたが、それにしては彼女の過去やトラウマの描き込みが少ないように感じました。

 

主人公の伊純は同じ陸上部のナナに負けたことが悔しくて、ウソのケガをでっち上げてまで敗北の言い訳をしてしまったことが彼女の苦い過去。それに対して、沙紀は「ダンスの仲間に裏切られて孤立した」とだけ(パンフレットには恋愛事情によるらしいことが書いてあるが)。

それだけだと、どうしてもパンチが弱いんですよ。他の4人を裏切って、敵の親玉に加担するほどの行動原理としてはね。

 

もっと、沙紀が「かつてのダンス仲間からどういう仕打ちを受けたか」にスポットを当てて、観ている側に「こんなことされたら、沙紀が人を信じられなくなるのも納得だなあ」と同情するくらいの説得力が欲しかった。

 

さらにいうと、敵の親玉・黒沙紀が孤独のまま成長した沙紀って...非常にひねくれた見方をすれば、「孤立しているやつは将来悪事をはたらく」っていう偏見にすら見えましたね。「集団でいるよりもひとりがいい」っていう人間がいたっていいじゃないですか。

そのへんはプリキュア的でもあるのでしょうし、大人から若い世代に向けたメッセージでもあるのでしょうから理解はできますが、現実社会で人間関係の煩わしさや強制される集団行動で嫌な思いをしてきた大人からしてみたら、納得のいかないところもある。

 

【ネタバレ】エンドロール後の展開

これはかなりネタバレとなりますが、5人はダンスで世界を救い、それぞれの場所へ帰って卒業式を迎え...てからの展開。

 

グランドフィナーレ、エンドロール、そこで本編終了かと思いきや、劇場版『エヴァンゲリオン』ばりに予告編のような映像が。

実は東京の同じ高校の新入生として再開することになった5人...って、そもそも模試で1位を取る蒼と、時間の計算で指を使っていた小夏が同じ偏差値の学校に入学するかね??という身も蓋もないことを考えてしまいました。

 

とはいえ、蒼はストレートに試験で合格したとして、伊純は陸上の特待生、小夏はピアノの特待生、あさひは合気道の特待生、沙紀はダンスの特待生として、5人とも偶然実力で同じエリート校に進学した、と無理やり納得しましたけどね。

 

まあそれはいいとして。

 

筆者は『ポッピンQ』が続きモノであるとはまったく思わなかったので、「グランドフィナーレとエンドロールで流した涙を返せ!」ぐらいに思いましたね。けっこう筆者好みの終わり方だったので。

逆に言えば、「マジか!『ポッピンQ』に続編あるんか!ひゃっほう!!」というファンの方もおられるでしょうから、エンドロール後のお楽しみとして前向きに捉えることにしましょう。

 

というわけで、まとめ。

先に書いたように、あまり期待せずに鑑賞したんですが、『ポッピンQ』は結果的に「思った以上に良かったし、号泣した作品」となりました。

比べたって詮無いことですが、「艦これ」なんかよりずっと良い映画。

「プリキュア」ライクなルックや「美少女がダンスで世界を救う」というコンセプトであるところから、敬遠される方も多いかもしれませんが、まったく美少女アニメにピクリともしない筆者が感動して泣いて帰ってきたので、年末年始で暇を持て余している方にはぜひともオススメしたい一本です。

 

ノベライズ版が発売されているので貼っておきますね。