見えなかったものが見えてくる。映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』
こんにちは、もとむらはじめ(@motomrahajime)です。
ようやく観ることが叶いました!今もっとも映画界隈を騒がしていると思われる、映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション』。
安定の立川シネマシティの極上爆音上映でビンビンに極音を浴びてまいりましたので、今日はモノクロ版『マッドマックス』の感想&レビューをお届けします。
V8!
マッドマックス 怒りのデス・ロード <ブラック&クローム>エディション
<ブラック&クローム>エディション 2017.2.8 ブルーレイ発売 映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』公式サイト
【原題】MAD MAX FURY ROAD BLACK&CHROME EDITION
【公開日】2017年/オーストラリア、アメリカ合衆国
【上映時間】120分
【監督】ジョージ・ミラー
【脚本】ジョージ・ミラー
【音楽】ジャンキーXL
【出演】トム・ハーディー、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト
【あらすじ】資源が枯渇した近未来。家族を奪われた元警官のマックスは、恐怖と暴力で民衆を支配するイモータン・ジョーに捕らわれるが、ジョーに反逆を企てる女戦士フュリオサらと共闘し、自由への逃走を開始する。
映画.comの評価平均点 4.4点 / 全23件
Yahoo!映画の評価平均点 4.16点 / 全8,750件(フルカラー版)
僕の評価は100点中 100点
文句なしに映画史上に残るカルト映画だと思います。モノクロ版を観た感想をざっくり言うと...
フルカラー版では見えなかったものが、モノクロ版を観ることで、見えてくる。
モノクロ版を観て「見えてきた」もの
すでにネット上に出ている感想や、ジョージ・ミラー監督のお言葉にもあるように、モノクロ版になったことでより際立っているところ、逆に分かりづらくなったところがあります。
まず「より際立っているところ」を挙げるとすると、
- 登場する乗り物やキャラクターのディテールがより鮮明になったこと
- 人物のやり取りが中心のシーンでも、その背後が見えるようになったこと
1にかんして、例えばフュリオサが運転する巨大トレーラーのウォー・リグ。フルカラー版でもその存在感は圧倒的なものがありましたが、モノクロ版になったことでより車内外の装備や計器がはっきり見えるようになっていましたし、主人公マックスのレザージャケットのあらゆるところに取り付けられている武器や小道具なんかも、より理にかなった配置だったことが明らかになりました。
「あっ、こういうメーターや装飾が施してあったんだ」とか、「あっ、こんなところに武器が隠してある!」とかね。
もちろん、フルカラー版では見えていなかったわけではないのでしょうが、『マッドマックス』は1カットでも膨大な情報量が詰め込まれた映画ですから、「見ているようで見えなかった」部分だったのだと思うわけです。
モノクロ版になって「白黒のグラデーション」だけで色を判別できるようになったぶん、脳に空き容量が出来たと言うか。その容量に余裕ができた分、より多くのディテールが「見えるようになった」。それは非常に新鮮な体験でしたね。
2にかんして、例えば序盤でウォーボーイズのニュークスとスリットが喧嘩するシーン。その背後に吊り下げられた「血液袋の」マックスがいるわけですが、フルカラー版ではウォーボーイズ二人の喧嘩を見守るのに必死で、見えてなかったんですよね。
それが、モノクロ版だと吊り下げられているマックスがよく見えるようになっている。そこで、「ああ、逆さ吊りにされるから、マックスの背中には上下逆さに文字が掘られていたんだ」という意味に気づく(もちろん、前情報でわかってはいたんですが、実用されていることを確認して合点がいく)。
もうひとつ言えば、中盤のイワオニ族の谷を抜けるシーン。マックスたちが乗るウォー・リグが谷に進入するシーンで、ふと無造作に廃棄されているスクラップになったクルマに目がいく。これもフルカラー版では見えていたはずなのに見えていなかった背景なんですよね。そこで、『マッドマックス』が如何に情報量が多く、想像して楽しむ余地がふんだんに残されている作品かというのが改めて実感されるわけです。
「ああ、おそらくフュリオサの前にもイワオニ族の谷を抜けようとした人がいて、その人の乗ったクルマは無残にもイワオニ族の餌食になったんだな」と。だから、あのシーンで突然スクラップになったクルマが映し出されることで、「イワオニ族のご機嫌を損ねると、とんでもないしっぺ返しを食らう」ということが事前に暗示されていたのだな、ということに気づくんですよね。
この、フルカラー版で「見えてなかった」ディテールが、モノクロ版で「見える」ようになったことこそ、 <ブラック&クローム>エディション最大の功績ではないかと、僕は思っています。「新たな想像の余地」に気づくことで、またさらに作品の奥深さにどっぷり浸れる。
だから、<ブラック&クローム>エディションを鑑賞したマッドマックス・ファンはみな揃ってこう思うはず。今すぐフルカラー版で見なおしたい!!
逆にモノクロ版で「見えなくなった」もの
モノクロになったことで魅力が半減した部分も少なくありません。そのひとつが「におってきそうなほどの熱」を感じるシーン。
例えば、爆発の炎だったり、砂漠の太陽光だったり。当然ながら色がついていないため、フルカラー版にあった、思わず「うわっ!熱ッッッ!!」と感じたシーンのパンチが、モノクロ版では色が白黒しかないため、抑制されている印象でした。
あとは、細かいけど映画でも重要なところで、植物の緑色も。
この点を解消するためには「一部だけカラーにしましたバージョン」の公開が必要なのでは...なんてことが頭をよぎりましたが、そもそもモノクロ版って完成形でもなんでもなくて、あくまでジョージ・ミラー監督の「提案」だと僕は思っていて。
というわけで、マッドマックス・ファンの正しい姿勢としては、モノクロ版を観たらフルカラー版を見なおして、またモノクロ版を観に行く、というサイクルを続けることでしょうね。
立川シネマシティではモノクロ版の上映終了日は「未定」となっていますし、極音モノクロ版を観たマッドマックス・ファンは、ドラッグ的に再び極音フルカラー版もキメたいという需要にスタッフの方々も気づかれているのではないか...と邪推できますので、ぜひ劇場で観ていただきたい。
モノクロ版を収録したブルーレイが発売されます。
これはフルカラー版とモノクロ版を収録したスペシャルパッケージも出そうな予感。