良い知らせと悪い知らせがある

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本当に良い映画も、良くない映画もレビューします。

『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』発売記念!遅ればせながら『シン・ゴジラ』をレビューします。

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筆者の厳選記事5選

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こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。

12月29日、延期に延期を重ねた『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』がようやく発売となり、最後まで話題性を欠かさなかった、2016年を代表する映画『シン・ゴジラ』。

 

前回アップした「2016年公開のおすすめ映画TOP10」という記事で予告したとおり、遅ればせながら『シン・ゴジラ』のレビュー...というか、素晴らしい考察や解説に関してはすでにプロ・アマ問わずさかんに行われた感があるので、今回は筆者の感想にとどめます。

 

 

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『シン・ゴジラ』公開前のテンションと、公開後

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結論から言うと、本日までに通算6回鑑賞しました。

本当に大好きな映画を何十回と観てる人からすると、6回なんて大した数じゃないのかもしれませんが、僕にとってはこんなに繰り返し通ったのは『シン・ゴジラ』が初めて。

正直、公開前まではナメてた人も多かったと思うんですよ。むしろ、「期待してる!」って人なんてわずかしかいなかったんじゃないかな。

僕も実際、ナメてるってことはなかったけど、さほど期待はしてませんでした。予算の面ではどうしてもハリウッド版に負けちゃうし、ギャレス・エドワーズ監督のGODZILLAはゴジラシリーズの中でも1、2を争うレベルで傑作だったし。

 

さらに、最初に『シン・ゴジラ』のビジュアルが公開されたときは、正直「微妙だな~」と思ったんですよ。「なんか腕細いなあ」と思ったり。

初期イメージ。当初はやっぱりネタにされてた。

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平成ゴジラ世代の僕としては、やっぱりゴジラと言えばマッシブでどっしりしてる印象が強かったですし、GODZILLAなんてそれをさらに一回りマッチョにしてたわけじゃないですか。

公開日が近づくにつれ、期待が膨らむ一方で、その期待が裏切られたらどうしようという思いもあったのです。

それで、実際に公開になってみると、すべての観客が度肝を抜かれたんですよね。

 

「とんでもない映画を観てしまった」

 

劇場を出るとき、筆者の後ろで度肝を抜かれたことを悟られたくないオタクっぽい人が、こんなこと言ってました。

「庵野はゴジラじゃなくてエヴァの続編作れよな~」

うんうん、わかるよ。認めたくないんだろう?あなたがナメてた庵野監督が新劇場版のヱヴァを超えるレベルの傑作を世に出してしまったことを。

まあそんな感じで初回の上映を済ませ、以降6回も鑑賞することになってしまったのですが...こんなに劇場で同じ作品を観たのは初めて(これまでは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『クリード チャンプを継ぐ男』の5回が最高でした)。

 

ざっくり『シン・ゴジラ』感想を

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まず素晴らしいと思ったのは、素人目に見て「リアルなシミュレーションぽく見えた」こと。これが実際の官僚だったり、科学者だったりの目線で見ると、いろいろと粗があるんでしょうが、一般のいち観客としては、十分に「映画の中のリアル」を感じました。

前半、官僚が早口で喋ったり、庵野監督お得意の明朝体テロップ(元ネタは市川崑監督)が目で追えない早さで表示されたりと、話されている内容とか、どんな立場の人が発言してるのかとか、理解できないストレスを感じさせないくらい、ちゃんと「ただならぬ事態っぽい感じ」が出てたのも良かった。

 

それからタバ作戦への持って生き方には確かに高揚感があったし、タバ作戦で自衛隊はゴジラにまったく歯がたたないんだけど、一歩も引かずに奮闘している姿は熱いものがこみ上げてきました。

「自衛隊頑張れ」が「ゴジラ頑張れ」を上回ったのは、ぼくの中では新鮮な体験だったんですよ。

 

中盤、ゴジラが東京を焼き尽くすシーンでは、僕自身が東京住まいであり、行ったことのある場所が破壊し尽くされる恐怖は、他人事じゃない臨場感がありました。感情のない表情かつ容赦がなさすぎるゴジラの凶悪ぶりは、「こいつを生かしておいたらヤベえ」感がビンビンに伝わってきましたね。

さすが『エヴァンゲリオン』の庵野監督、モロにゴジラに使徒っぽさが憑依していて、感情移入の余地のなさがしっかりにじみ出てました。ゴジラのビジュアルが初めて公開されたときにちょびっと「がっかり」してた自分に説教くらわせたい。

 

後半はリアリティラインがぐっと下がり、前半が「現実」なら、後半はまさに「虚構」。会議、準備、根回ししかないはずのヤシオリ作戦までの段取りが、むしろ気持ちよさすら湛えていたのは驚きです。ヘタな監督が作れば、ゼッタイに退屈するシーンですよ。それをあれほど釘付けにした手腕はさすがとしか言いようがない。

 

やはり庵野秀明監督は天才か。

 

そしてクライマックス。「宇宙大戦争」のテーマに乗せて疾走する新幹線爆弾のシーンからはじまるヤシオリ作戦、アガりましたね~

メカゴジラでも、スーパーXでも、オキシジェン・デストロイヤーでもない、超兵器ではなく、現実にあるインフラと兵器であんなに手に汗握るシーンを作り出すとは!

一般人の描写がないとか、官僚や政治家の活躍だけが描かれているとか、批判も多い後半の流れですが、もっとも爽快で、かつ最短距離で人間対ゴジラを実現するには、はっきり言って一般人の云々はノイズでしかないでしょう。

その清々しさに感服しましたね。ぬるい人間ドラマは抜きにして、最短かつ最速で答え(結果)を導くゴジラ映画、これが観たかったんですよ。

 

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『シン・ゴジラ』好きなシーン

  • コメディチックな大河内内閣のやりとり
  • 蒲田くん(ロケ地は蒲田じゃなくて宇都宮らしい)登場
  • 巨災対のやりとり
  • ゴジラ第4形態上陸
  • タバ作戦で自衛隊が奮闘するシーン
  • ゴジラが東京を焼き尽くすシーン
  • ヤシオリ作戦開始
  • 新幹線爆弾、無人在来線爆弾

好きなシーンはそれぞれありますが、一番を決めるとすれば、蒲田くんことゴジラ第2形態が蒲田に上陸するシーンです。

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これはさすがに度肝を抜かれました。たぶんほぼ100%の人が、「これ、今回の敵怪獣かな?」と思いましたよね??僕も例にもれず、そう思いました。それがまさか、今回のゴジラが「進化する究極生物」とはね。

第4形態が放射線を吐くシーンも十分インパクトがあったんですが、得体の知れなさ、怪獣らしさという点では、第2形態の蒲田上陸から第3形態へ進化するまでの一連のシーンの方が上を行ってます。

「3.11の津波を一般の方が携帯で撮影した動画」を見たときの、あっという間に家屋を飲み込んでいく濁流の恐怖感、死ぬ直前に人間のドラマなど差し挟む猶予すらないレベルで人が死んでいく絶望感。当時、被災地ではない東京に居たからこそ、不謹慎ながらも感じた、津波の「まるで映画みたいな」現実味のなさ。

それら恐怖感、絶望感、虚構のような現実をすべて内包していたのが、ゴジラ第2形態の東京縦断シーンではなかったかと。

 

ちなみに、僕が『シン・ゴジラ』で一番「驚いた」のは、ゴジラを演じたのが狂言師の野村萬斎氏だったこと。

 

非常に個人的ではありますが、僕が大学の卒業論文で取り扱った題材が「狂言」なんですよ。なので必然的に狂言の歴史を勉強したし、もちろん野村萬斎氏の公演やDVDも観ました。

そんな学生時代の思い入れのある人物であり、俳優としても大好きな狂言師・野村萬斎氏がゴジラを演じる...これ以上のサプライズはないですよね。

 

『シン・ゴジラ』残念だったところ

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批判のやり玉に挙げられがちな、石原さとみ演じるカヨコ・アン・パタースンは好きなキャラクターですし、一般人のドラマがないとか、政治家・官僚だけがやたらヒロイックに描かれているとか、そんなのは前述のとおり、ほとんど気になりませんでした。

それを描いたところで、この緻密なまでに計算された『シン・ゴジラ』の気持ちよさが倍増するとは思えないので。

 

なので、ごく微妙なところですが「もう少しなんとかならんかったのかな」と思ったのは、後半の外国人の描き方ですね。すでにライムスターの宇多丸師匠が指摘されていますが、なんとなくぞんざいな感じがしました。

www.tbsradio.jp

 

例えば、アメリカ大使館で3人の駐日大使?が窓の外を眺めながら何やら話しているシーン。「あんな横並びで喋るとかある?」と思ったし、ドイツでスパコンを日本に貸すだどうだと話しているシーンが、国の最高級の情報機関であるはずなのにどうも安っぽく見えたり...

日本人が頑張るのはもちろんですが、ゴジラという災害で壊滅しつつあった東京に乗り込んで来て、熱核攻撃を食い止めるために協力してくれる外国人って、主要な登場人物と同じレベルとまでは言いませんが、もっと丁寧に描写してほしかったとは思いますね。

テンポを重要視するのであれば、あまり時間は割けなかったとは思いますが、それにしても外国人の描写に雑な印象すら持ってしまったのは事実。

 

というわけで、まとめ。

公開から5ヶ月も経過しているわけですが、ようやく感想が書けました。

出遅れた感ハンパじゃないですが、これで『シン・ゴジラ』『君の名は。』『この世界の片隅に』の、2016年を代表する日本映画すべての記事が年内になんとかアップできたことを喜びたいと思います。

 

 

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