新たなバディ・ムービーの代表作となるか? 映画『ナイスガイズ!』の感想、レビュー
こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。
本来なら金曜~日曜にかけて、新作映画の公開日に観に行く、というのが僕の信条なのですが、先週末はいろいろと忙しいこともあり、新作映画のレビューが月曜の夜になってしまいました。
さて、今回観に行った新作映画は、アカデミー賞最有力候補として日本でも話題の『ラ・ラ・ランド』で主演を務めるライアン・ゴズリングが、ラッセル・クロウと共演した『ナイスガイズ!』です。
ありそうでなかった組み合わせの凸凹コンビが織りなすバディ・ムービー。予告でも毎回笑いが起こっていたため、期待値も高い映画でしたが果たして。
それでは、レビューへとまいりましょう。
映画『ナイスガイズ!』
【原題】The Nice Guys
【公開】2016年5月20日/アメリカ
【上映時間】116分
【監督】シェーン・ブラック
【脚本】シェーン・ブラック
【声の出演】ラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリング、アンガーリー・ライス
シングルファーザーで酒浸りの私立探偵マーチ(R・ゴズリング)は、腕力で揉め事を解決する示談屋ヒーリー(R・クロウ)に強引に相棒にされ、失踪した少女の捜索を開始する。凸凹コンビに、13歳で車の運転までこなすキュートなマーチの娘・ホリーが加わり捜索を進めていくと、簡単なはずだった仕事は、1本の映画にまつわる連続不審死事件へと繋がり、やがて3人はアメリカ国家を揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれていく―。(公式サイト)
映画.comの評価平均点 3.8 点 / 評価:20件
Yahoo!映画の評価平均点 3.93 点 / 評価:95件
Filmarksの評価平均点 3.82点 / 評価:923票
僕の評価は100点中 60点
ん~ 各レビューサイトの評価は軒並み高いんですよね。
「笑えた!」
「ライアン・ゴズリングがカッコ悪いけど最高!」
「アンガーリー・ライスちゃん可愛い!」
そういう感想が出てくるのはとても理解できる...んだけど、僕が求めていたのはそういうことじゃないんだよなあ...と。
僕のざっくりとした感想は...
あれっ、けっきょく予告編の期待値を上回ってこなかった…
繰り広げられるギャグに会場は笑いに包まれていたし、愛すべきキャラクターたちのドタバタも楽しげでした...が、乗れる/乗れないでいったら、僕は乗れませんでした。途中で退屈して居眠りしちゃったくらいですし。
ギャグに乗れるかどうかが評価の分かれ目?
以前の記事でも書きましたが、1月に公開された洋画の本編前では必ずと行っていいほど流れていた『ナイスガイズ!』の予告編。
トイレのドアをバタバタしたり、投げた銃が窓の外に飛んで行っちゃったりと、そういう「面白げな」シーンでは必ず会場が笑いに包まれ、否が応でも期待感が高まっていたため、本編ではさぞ抱腹絶倒なギャグシーンが出てくるのではないかと思っていたら...
うーん、予告で慣らされすぎたのか、なんとなく乗れなかったなあと。序盤に出てくる光化学スモッグに抗議する団体のシーンがピーク。
いや、実際上映中はギャグシーンで笑いが漏れていましたし、決してそのギャグがスベってはいないと思うんですけど、やっぱり「万人にウケる笑い」って難しいんだなあと感じましたね。観客を泣かせるのは簡単だけど、笑わせるのは本当に難しい。
なぜ退屈に感じてしまったのか。
主要なキャラクターや70年代アメリカのファッション・音楽は、確かに魅力的でしたよ。
クールな役が多かった印象のライアン・ゴズリングが演じる、ドジでクズでアホなんだけど憎めない私立探偵・マーチ。
最近見ないなあと思っていたら、熊みたいに恰幅良くなっちゃったラッセル・クロウの、粗暴で裏がありそうな示談屋・ヒーリー。
そして、今回もっとも賞賛を浴びたであろう、新星アンガーリー・ライスちゃん演じるキュートでマセガキで車の運転もできて、父親であるマーチのよきツッコミ役、ホリー。
キャラクターや70年代アメリカの雰囲気を楽しむなら、それはそれは十分すぎる映画だったと思います。バディ・ムービーである以上、主人公側の凸凹コンビが魅力的であるのは当然というか、それが出来てなかったら駄作の域ですからね。
それで、さらに良作バディ・ムービーへと昇華させるのであれば、やっぱり敵側にも魅力がなきゃダメなんですよ。
『ナイスガイズ!』を観ていて思い出したのは、最近のバディ・ムービーのなかでも僕が好きな『コードネーム U.N.C.L.E.』。
こちらの舞台は60年代
エリザベス・デビッキ演じるヴィクトリアなんて最高の悪女だったと思うし、サディストのマッド・サイエンティスト(役名忘れた)も非常にエッジが立ってて印象に残るキャラでしたよね。
演じたときはまだ20代前半だというからオドロキ。
ひるがえって『ナイスガイズ!』の敵キャラは... 3人の殺し屋、謎の美人秘書、黒幕、だれひとり印象に残らない。主人公側のキャラは立ちまくっているのに。
というわけで、前半は乗れたけど後半は退屈だった...というのは、前半ですでに主人公側のキャラの引き出しを開けきったからじゃないかなあ、と。
『コードネーム U.N.C.L.E.』はスパイものというジャンルもあって、こういう特異なキャラを出しやすかったというのもあるとは思いますが、『ナイスガイズ!』だって3人組の殺し屋とその雇い主という悪役を出すのなら、もっとキャラ立ちさせてほしかったですね。
でもね、個々のキャラクターの個性とか魅力って、確かに映画が面白くなるための大事な要素なんだけど、それだけじゃあ物足りないっていうのも一方にあって。
まず思ったのが、前半のクライマックスと後半のクライマックス、どちらも似たようなパーティー会場でのアクションなんですよ。印象だけで言うと、アメリカの富裕層が財力にまかせて催してるような、「アメリカの金持ちが週末にやってるっぽいパーティー」を舞台にしてのアクション。僕はそこで既視感をおぼえてしまって、退屈になってしまったんじゃないかなあと。
さらに、せっかく主人公が探偵なのに推理要素が薄口だったり、あっと驚くような黒幕が出てきたりといった、「探偵モノ」に期待される要素があまり見られなかったのは残念。
もうひとついうと、僕好みのバディ・ムービーって、いがみ合っていた二人が最終的にはお互いの背中をまかせ合うくらいの信頼で結ばれる、漢による漢のためのバディ・ムービーなもので、そのへん『ナイスガイズ!』は主人公の二人がバラバラに行動することが多くて、「共闘感」が不足してしまったのも事実。
あとね、せっかく70年代の古き良き、だけど新しいアメリカ、クルマ社会であるアメリカに日本製の自動車という黒船が席巻していく70年代アメリカ、そんな時代を舞台にしたのであれば、ファッションや音楽といった「70年代の雰囲気」だけじゃなくて、もっと当時の政治情勢とか、人々の不安や希望とか、そういうのも事件の背景なんかに織り交ぜてほしかったんですよ。
先にも書きましたが、序盤の光化学スモッグに抗議する団体のシーンは当時の世相を表すわけで、観ていて「おっ」と思ったんですが、けっきょくギャグとして消化されるだけだったのが、やっぱりちょっと惜しい。
というわけで、まとめ。
話題の『ラ・ラ・ランド』でも主演を務めるライアン・ゴズリングの主演映画ということで、ちょっとハードルを上げすぎたかな、と思うのと同時に、ライアン・ゴズリング主演作だからって、絶賛しすぎるのもどうかな、と思うので、観ていて感じたことをそのまま書きました。
でも、先に書いたように、ライアン・ゴズリング、ラッセル・クロウのイチャイチャを存分に楽しめる作品ですし、上映中は要所要所で笑いが起きてましたし、(僕はあまり好きな表現ではないですが)何も考えずに観られる映画としては... まあ、十分過ぎる作品じゃないでしょうか。
『ラ・ラ・ランド』の公開も近いので、ぜひ劇場で!
輸入盤のサントラです。
シェーン・ブラック監督の近年の良作といえばこちら。
僕の一番好きなライアン・ゴズリングはこちら。