賛否両論が出揃ったので、改めて書いてみる。映画『ラ・ラ・ランド』の感想、レビュー。
こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。
公開から2週間、ようやく平日の劇場が落ち着いてきたので、暇を見つけて観てまいりました。2回めの『ラ・ラ・ランド』。
1回めの感想...というか、文句垂れのような記事はこちらにありますので、ぜひお読みください。
すでに賛否両論(賛の方が圧倒的に多いですが)出ているなかで、遅ればせながら2回めの鑑賞。今回は静かに観ることができましたよ。
アカデミー賞で大絶賛、日本でも手放しで賞賛され、賞賛され尽くしている『ラ・ラ・ランド』。僕は1回めの鑑賞がアレだったのと、2回めの鑑賞ということで冷静になって観たこともあって、少しストロングスタイルな感想になったように思います。
それでは、まいりましょう。
映画『ラ・ラ・ランド』
【原題】La La Land
【日本での公開】2017年2月24日
【上映時間】128分
【監督】デミアン・チャゼル
【脚本】デミアン・チャゼル
【出演】ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド
【あらすじ】何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入る。そこでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。(シネマトゥデイ)
映画.comの評価平均点 4.0 点 / 評価:569件
Yahoo!映画の評価平均点 3.88 点 / 評価:3,585件
Filmarksの評価平均点 4.2点
僕の評価は100点中 55点
ざっくりとした感想は...
そんなに絶賛されるほどの大傑作だったかなあ。そんなに移入できなかったし、全体的に乗れなかった。
必ずしも「登場人物に感情移入できなければ、ダメ」とは言いませんが、ラブストーリーなのにほとんど共感もできず...でした。
ちなみに、絶賛評は各レビューサイトでさんざん読みましたし、否定評は『セッション』を舌鋒鋭く批判された、ジャズミュージシャンの菊地成孔さんの『ラ・ラ・ランド』評、映画評論家の前田有一氏の超映画批評も読みました。
僕は音楽弱者でミュージカル弱者ですので、ジャズという切り口で、ミュージカルという切り口で、この作品を論評することができません。
ということで、自分なりに思ったことをつらつら書くだけです。どちらかというと、ラブストーリーという切り口で論じる感じですかね。僕はべつに恋愛マスターではないですけど。
それらを加味したうえで、僕は賛否で言うと、どちらかというと否定評の方に共感、同意するかなあ...といった感じです。
『ラ・ラ・ランド』で思い出した『君の名は。』。
『ラ・ラ・ランド』と『君の名は。』、何か似てるなあと思ったんですよ。
新海誠監督がご自身のTwitterで「夢を追う男女の不安と恋。音楽と映画の特別な瞬間が何度もありました」と賞賛されているのもありますし、「音楽と映画」というところに新海誠監督作品っぽさを感じるのも、そう。恋愛の描き方とかにも、何か通じるものがあるような。
何より顕著なのが、本編開始直後になりふり構わず観客にグーパンチを食らわすところが、両作品の最大の共通点というところ。
思い出していただきたい。『君の名は。』のオープニングは、まるでテレビアニメのような(妙なたとえですが)、「これから本編で起こること」の導入から始まりましたね。そこで、否応なしに映画に引き込む。
『公式ビジュアルガイド』。DVDはいつ発売なんでしょうね。
『ラ・ラ・ランド』のオープニングは、渋滞したハイウェイで突然はじまるミュージカル。あまりに唐突で、我を忘れて見入ってしまいますね。「いったい何が起こっているんだ」と。これもまた、強引なほどに映画に引きずりこまれてしまう。
この手法を「ダメ、ゼッタイ」と頭ごなしに否定するつもりはありません。実際、楽しいところはありますから。
もちろん、開始直後に観客を引き込むギミックって、昔からある手法だとは思うんですが、『ラ・ラ・ランド』のそれはより強引に感じましたね。「ミアもセバスチャンも参加してないじゃん、何かユニクロのTシャツのCM観てるみたいだな」って思ったり。
映画と観客の関係をプロレスで例えるなら(最近これが多くてすみません)、セオリーとしては選手同士が組み合い、グラウンドでバックの取り合いをするところが、ゴングが鳴った瞬間に相手のあごに重い一発を食らわして、開始早々ダウンさせるようなもの。「何が何でも勝て」というルールならアリでも、プロレスではやっちゃいけない、試合の立ち上がり。
この「開始の一発」食らっちゃったら、もうクラクラして、平静な気持ちで映画を観ることができなくなっちゃうんですよね。最初に一発食らわす手法、映画界の最近の流行りなのかな?
観ている方は楽しいっちゃ楽しいんですけど、乱発するとキケンな感じすらしちゃうんですよね。この「開始直後にワンパンチ」がないと、どの映画も物足りなく感じちゃう...みたいな。まさに映画におけるドラック。個人的には、これが「いい映画の基準」となったり、映画のトレンドみたいになるのは...ちょっと諸手を挙げて賛成は出来ないなあ。
『ラ・ラ・ランド』を観たあとは、こちらのパロディー動画をおすすめ。
アカデミー脚本賞は逃したしたようです。
2017年のアカデミー賞最多ノミネートで話題となった『ラ・ラ・ランド』。ノミネートのひとつに、最も優れている脚本を持つ映画に与えられる『脚本賞』がありましたが、こちらは受賞を逃したようです。
まあ、これには納得ですね。脚本、はっきり言って僕は雑な感じすらしました。ふたりの恋愛でウットリ...することはなかった。
菊地成孔氏いわく、「本作は一種の変形ヤオイであり、うっすーいオタク仕様である。」
さすがにそこまで酷評はしませんが、夢を追う二人がもがき、悩み、苦しむところに少しだけ自分と重なるところは見い出せたものの、ふたりの恋愛模様じたいは... 何というか、「いい大人がなんて童貞っぽい恋愛模様を描いてるんだ」って思いましたね。
これはこれで酷評か...
だって、二人の恋愛の始まりが、「セバスチャンのピアノを聴いたミアが、恋愛感情がトップギアに入るくらいに心を鷲掴みにされた」ですよ。しかも冒頭では渋滞したハイウェイで最悪の出会いをした二人が、です。
ジブリ映画の名作『耳をすませば』で言えば、雫と聖司くんが最悪の初対面、でも、雫は聖司くんのバイオリンを聴いて、惚れ込んじゃう...ってことと同じじゃないですか。
僕は大好きです。『耳をすませば』
中学生同士の恋愛を描いた『耳をすませば』ならOKですけど、ジャズ、ミュージカル、大人の恋愛を描いているはずの『ラ・ラ・ランド』でこれは...
さらに言うと、『ラ・ラ・ランド』では「春、夏、秋、冬」と二人の恋愛模様を区切りますよね。「点」で描くんです。ある時点で、二人は幸せ絶頂、ある時点で、二人の関係は決裂...みたいに。
恋愛関係の機微、微妙な心の揺らぎこそ、ラブストーリーの醍醐味だと思うんですが、「点」で描かれているものだから、非常に大味に感じたんですよ。「急に仲良くなったな」「急に仲悪くなったな」みたいに。
クライマックスのミュージカルで、ふたりの過去、未来の点と点をつないで線にしてくれたら、否応なく「脚本賞あげちゃう!最高!!」になったとは思いますが、実際に演じられたミュージカルは、そういうものではなかった。「観客が観たかった、ハッピーエンドな二人の未来」ではあるものの、やっぱり、切り出したダイジェストっぽい。目では楽しめるけど、心はモヤモヤって感じ。
『ラ・ラ・ランド』では、脚本の軸となっているはずのラブストーリーと、ところどころで挿入されるミュージカルが乖離しているように思えて、むしろラブストーリーよりも、大技のミュージカルがメインのように感じてしまって、僕は最後まで『ラ・ラ・ランド』の世界観に乗れなかったんじゃないのかなあ~と。ウットリできなかったんじゃないのかなあ~と。
これじゃやっぱり、脚本賞は獲得できないんじゃないかなあ。
ちなみに、今年脚本賞を獲得した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』はまだ観ていないので脚本に関して何も言えませんが、昨年の脚本賞... どの作品が獲得したか覚えていますか?
『スポットライト 世紀のスクープ』です。
日本ではあまり話題になりませんでしたが、僕は大好きな作品です。物語中にひとつひとつ布石を置いていって、ラストにすべてを昇華させる感じ。観た後に「ほぉぉぉ...」ってなるんですよ。「良いもん観たなあ」というか、「これは見えてくる世界が変わるなあ」って。
それくらい、優れた脚本には目線や思考を変えさせるくらいのパワーがある。
ざっくり、まとめ。
どちらかというと否定的意見を中心に書いてきましたが、「点」で観れば好きなところもあります。それこそ、ミュージカル弱者な僕でも、本編で流れる数分のミュージカル・シーンでは心をグッと掴まれましたし、ニワカながらにJAZZ BARに興味出てきましたし。
今度、東京は吉祥寺にある老舗のJAZZ BAR『サムタイム』に足を運んでみようと思います。いやホント、影響受けやすくってすみません。
影響受けたんなら、けっきょく良い作品だったんじゃないかって話ですけど、僕が観たかったラブストーリーではなかったなあ...ということで。
最後に、最近プロレスばっかり観てて、このブログの映画の感想にもプロレスの例えがチラホラ出てきてまして。いっそ「プロレス的目線で映画を語る」っていう、ある意味オリジナリティーあふれる映画ブログに方向転換するのもありかなあ~なんて思ったり。
『ラ・ラ・ランド』サウンドトラックは必聴です。