ファンこそ怒るべきでしょ。映画『劇場版 艦これ』レビュー
観てきました『劇場版 艦これ』。
いつもの立川シネマシティで極上爆音上映にて。
ネットでの評判は悪くない?ようです。
割りと真面目にみんな安心して艦これ映画見て欲しい、普通に泣きます
— 酢烏賊楓@資材0バケツ0の鎮守府 (@suicakaede) 2016年11月26日
そしてとある艦娘の評価が5000倍上がります
「劇場版艦これ」、一見さん用の説明はバッサリカット、シリアスモードに統一したストーリー、明確な目標、登場キャラは多数だが本筋に絡むのは少数に絞る、等で「締まった」映画になってました。危惧されたようなgdgd感は一切無し。戦闘アクションもカッコ良かったし。
— 間借りさん (@magarisan) 2016年11月26日
かなり無難にテレビ版の反省を活かしてたとは思う
— あ艦これの中の人 (@akankore1) 2016年11月26日
エア提督とか存在を99.9%くらい消されてたし
なるほど、熱狂的なファンがいるのも頷けます。朝イチの上映だというのに席は9割以上埋まってましたし(いわゆる「提督」だけでなく、中学生くらいの女の子も見かけました)、最前列には帝国海軍の第二種軍装に飾緒までつけた提督が鎮座されておりました。
photo by Military Force
上映後、館の外で中学生らしき集団とツーショット写真を撮られておいででした。たぶん学校でネタにされるんでしょうかね。
さて、前置きはこのへんにしておいて、今回はアニメ版全12話と、ニコニコ動画で「【艦これ】時系列終焉の地まとめ」という動画を視聴してから劇場版に臨んだ「艦これ弱者」の筆者が、『劇場版 艦これ』をレビューします。
ちなみに筆者は原作の「艦これ」をプレイしたことがなく、アニメ版もざっと観たくらい。とくにこれといった推しの艦娘もいません。
モチーフになっている帝国海軍や軍艦、戦史については、ディープなミリオタというわけでもなく、せいぜい戦艦、駆逐艦、巡洋艦、空母の違いがわかるとか、「大和ホテルのオマージュ」が理解できる程度です。
シネマシティの極上爆音上映の、しかも1番設備の良いa-studioで上映されるというのと、わりと評判がいいらしいというので、それじゃあ観てみようとなったレベルです。あらかじめ。
※以下、ネタバレありです。
良かったところ…
あったかなあ。
筆者は熱量のある艦これファンではないので、だいぶフラットに鑑賞できたと思うんですが…特筆して「ここ良い!」と思えるところはなかったですね。
「戦闘アクションが良かった」という評価を見かけたので期待して観たんですが、あれで良かったと言えますかねえ…そりゃアニメ版よりは良かったかも知れませんけど。
強いて言うなら、なんとか91分にまとめてたところでしょうか。あれが100分以上は苦痛です。
それと、相変わらずシネマシティの極爆は「音」が良い。
「劇場版 艦これ」の悪かったところ
海の表現、海上戦の表現
まったくの期待以下でした。
艦娘たち、上映時間のほとんどが陸の上か黄泉の国?じゃないですか。本当に艦これなのこれ?
まず水しぶきの表現。
適当にベタ塗りしたかのような海原は、さながら黒板のようですし、その上を滑る艦娘の足元に申し訳程度の水しぶきエフェクトだけ。黒板の上を滑ってるスケーターにしか見えなかったですね。
夜戦とはいえ、海はもっとキラキラしてるでしょうし、艦船の照明や砲撃の閃光が映り込むものでしょう。
「深海棲艦の禍々しさを表現している」にしても、海中の赤い不気味な光が水面に映ってるとか、もっとやりようはあったように思いますけど。
砲撃で大きな水しぶきがあがっても、すぐに消えちゃってる。パラパラと細かい水の飛沫は降ってこないの?そもそも海上を走行する船は、常に細かい水の飛沫をかぶってるはずですよね。
軍艦どうしの戦いを描くわけだから、舞台となる海の表現はこだわりぬいてなきゃダメ。
海のキラキラ表現、水しぶきの表現は、他を差し置いてでもフェティッシュなまでにこだわっていれば、それだけで「絵がすごい!やっぱ劇場版はこうでねえと!」と感心できたはず。
それから海上戦、なんかグズグズしすぎじゃないですか?
戦闘中だというのにやたら艦娘たちがエモーショナルに叫んだり泣いたりして、そこでいちいち戦闘のスピード感がそがれている。
アニメ版から多用されていた「立ち尽くしている艦娘に砲撃が浴びせかけられようとした刹那、間一髪他の艦娘が助けに入って事なきを得る」カットが、今回も無事確認できましたね。もう既視感ありありでうんざりすよ。
艦娘たちのドラマパート
「硬派なミリタリーもの」は端から期待してはいないものの、それにしても艦娘どうしのベタベタ、意味のないお色気シーン、多すぎやしませんか?熱狂的な「提督」への目配せなんでしょうけど。
あってもいいんですよ、そういうシーンが。その後のシリアスパートをぐっと重みのあるものにするために、日常のホンワカがあるのはね。でも、その効果を狙っていたようには見えなかったなあ。
それに2016年のアニメで今どき「絶対ナイショにしとかなきゃいけない重大な秘密を、実は当事者の本人が偶然聞いてました」をやりますかねえ。トップシークレットの話を当事者本人がいる宿舎のすぐ近くでやるなんて迂闊にもほどがあるでしょ。
それから「深海棲艦は、もとは艦娘で、深海棲艦を轟沈させれば艦娘として復活する」でしたっけ。これって原作ゲームの「艦これ」にはなくて、ファンの二次創作のなかで後づけ的な説として語られていたものですよね?アニメ版でも「それっぽく」語られていたような気もしますが。
で、二次創作の中で流布していた説が、劇場版でいよいよ公式設定になったということでいいんでしょうか。間違ってたらすいません。
ということは、深海生物は「エヴァンゲリオン」の使徒のように、アダムに還るという目的があり、人類側はそれを阻止するためにエヴァを作った…というような話かと思ったらそうでもなくて、ただ単に艦娘たちの内輪で消費と生産を繰り返してるってことですか。
かつて存在した艦艇の記憶を有する云々の設定はどうなったんですかね。
さらに、碇ゲンドウ的なポジションにあったと思われる提督の存在を消去してしまった結果、彼女たちの存在意義がボンヤリしてしまっている。アニメ版ではまだ提督という存在で、守るべき何か、阻止すべき何かのために艦娘たちは戦場に向っていることを暗示していたように思うんですが…これは明確に改悪でしょう。
アニメ版しかり、「艦これ」の設定が、提督からお叱りを受けたり、ブレブレだったりするのって、そもそも「艦これ」というゲームの細かい設定は、プレイする「提督」それぞれの想像に委ねられてたからなんですよ。
だからこそ、想像の余地がある部分を二次創作で盛り上げていたわけじゃないですか。
ところが、各自が想像力で埋めればよかった部分を、アニメ化してストーリーをつけることでディテールまで描く必要が出てきて、あまつさえ二次創作の設定すら混ぜ込んでしまったから、設定や艦娘のキャラクターについて、提督たちの間で批判や論争が巻き起こる事態になった。
さらに、その都合をつけるために新たな設定を加えてしまった結果が、この劇場版…という風に筆者は捉えましたが、どう良い方向に解釈しても、やっぱり「劇場版 艦これ」が手放しで「面白かった!」とは到底思えないですね。すいません。
救いのあるR-TYPE
「救いのあるR-TYPE」という感想に対して。
R-TYPEがトレンドになってたから「オッ新作かな!?」って思ったら艦これの話だったし
— きれいな変態 (@yoki_on) 2016年11月26日
ほぼ全員の意見が「トレンドになってたから見たら劇場版艦これが“救いのあるR-TYPE”だって評されてただけだった、救いのあるR-TYPEなんてR-TYPEじゃねえだろ」で一致していらした
救いがあるとかもそうだけど、そもそも五体満足で出撃できてる時点でR-TYPEじゃないよねえ。
詳しくはこちらの記事を。閲覧注意です。
というわけで、まとめ。
あえて提督というフィルターを持たない筆者が、「劇場版 艦これ」をレビューしてみました。
正直、帝國海軍にもゲーム艦これにも愛のないスタッフが、適当に企画を立ち上げて、適当にお茶を濁した映画だと感じましたね。愛がない。
ファンこそもっと、諸手を上げて喜んでるだけでなくて怒るべきでは。提督フィルターがかかっているにしても、批判するべきところはあったでしょう。無理して絶賛しているような気がしますよ。
続きがあるような終わり方でしたが、続編では上手く収束させていって欲しいところ。
熱狂的な提督にとっては、大画面で手塩にかけた艦娘たちを愛でる映画となっているので、ぜひ劇場に足を運んで欲しいと思う次第です。
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