良い知らせと悪い知らせがある

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ネタバレあり!岡田くんやっぱカッコイイわ。岡田准一主演、映画『海賊とよばれた男』レビュー

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筆者の厳選記事5選

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出典:映画『海賊とよばれた男』公式サイト

こんにちは、元村元(@motomurahajime)です。

前回の記事で予告したとおり、今回は百田尚樹原作で山崎貴監督、岡田准一主演の『海賊とよばれた男』のレビューをお届けします。

 

その前に…

小説『海賊とよばれた男』は、出光興産の創業者である出光佐三をモデルにした歴史経済小説。第10回本屋大賞を受賞し、2016年12月現在、上下巻累計で420万部突破のベストセラーとなっている作品です。

映画を鑑賞するにあたって、事前に何も知識を入れずにまっさらな状態で観るのもいいですが、筆者としてはできれば原作小説を読むか、最低でも公式サイトを読むかしてから鑑賞されることをオススメします。

とくに公式サイトの「コラム『海賊とよばれた男』の時代背景」を読んでおくと、より映画を楽しめますよ。

kaizoku-movie.jp


キャスト、登場人物についてはこちらを。

キャスト|映画『海賊とよばれた男』公式サイト


それでは、レビューへとまいりましょう。

 

良かったところ

オープニングから100点満点

映画のはじまりは東京大空襲のシーンから。山崎貴監督が「あまり見たことのない東京大空襲のシーンを作りたい」と語っているように、非常に斬新なカメラワークで東京大空襲が描かれます。

どアタマ映し出されるのは、東京の上空を飛行するボーイングB29スーパーフォートレスの銀色のボディ。それも超至近距離から舐めるように。

B29の画像を貼っておきますね。

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photo by Antoine Cascail | Flickr

 

ゆっくり移動しながらB29の腹の部分へカメラが移動したかと思ったら、腹の部分がパカっと開き… 爆弾がスクリーンのこちら側に向かって投下される。

そのままカメラが爆弾を追うと爆弾が分裂、焼夷弾が現れ、東京の市街地に降り注ぐ…

なかなか文字情報だけでは伝わりにくいかもしれませんが、過去に経験したことのないアングルから東京大空襲を見せられると、「こうも恐怖を煽られるのか!」と言うか、ライムスター宇多丸師匠の言葉を借りて言えば、兵器の「暴力性」が非常に強調されるわけですよ。

もうこのオープニングのシーンだけで「この映画はヤバいことになりそう」感。凄惨なシーンではあるものの、映像作品としては非常に良いものを観ました。まさにVFXを駆使した、VFXだからこそ実現できたシーン。このオープニングで100点満点です。

今回は随所でVFXが作品の良さを後押ししていました。先のB29のシーンもそうだし、空襲で焦土と化した東京や、昭和初期の国岡商店、満州鉄道本社など、「本当にVFXなの??」と思わせるレベルの完成度。山崎貴監督、今回は本当に良い仕事してます。

 

岡田くんのベストアクト!

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どの登場人物も魅力的なんですが、やっぱり主人公の国岡鐵造を演じた岡田くん、良かった。

特殊メイクで27歳から91歳まですべて本人が演じたとういことが話題となっていましたが、立ち振舞や発生、それらを含めた国岡鐵造の雰囲気を、演じる国岡鐵造の年齢によって変化させ、見事に演じきっています。

とくに若き頃の国岡鐵造が「海賊」と呼ばれるゆえんとなった、「舟出せえええ!!」からの小舟で軽油を販売するシーンのかっこよさたるや。音楽の後押しもあって、何度も見返したいシーンになっています。

「美化しすぎている」「右寄りの思想」なんて批判もちらほら見かけましたが、それくらい振り切ってないと、人間ドラマにも偉人伝にもなれないハンパなものができてしまいますからね。

エンターテイメントですので誇張はあるにせよ、小説や映画で起こることは事実を元にしています。詳しくは出光佐三のWikipediaをご参照ください。死去に際して昭和天皇が歌を詠んだとかすごいですよ。日章丸事件とかも、一企業が起こしたとは考えられないレベルなんだよなあ~

出光佐三 - Wikipedia

 

残念だったところ

小説に比べ物足りない感

全体的にテンポの良さがあった反面、やはり上下巻の小説を2時間半の映画にまとめるのは難しかったんですかねえ。いろんなとこ端折ってましたし、人物の掘り下げも物足りない印象でした。

たとえば、国岡が愛した画家の仙厓(せんがい)のエピソードが一切なかったり(それっぽい絵は劇中の小道具として登場)、細かいところで言うと、国岡がなぜ会社を大きくしても「店主」と呼ばれ続けていたのか、とか。そのあたりはけっこうエピソード的には重要だと思うんですけどね。

仙厓の絵なんて、小説のラストで重要なはたらきをしたわけですから、少しでも絡ませるべきだったのでは。

そのかわり、映画版のラストが「国岡が離縁した前妻・ユキとの思い出」になっているというのは、『海賊とよばれた男』のラストとしてはパンチが弱すぎる気がするのですよ。

もちろん、ユキとの思い出を語るのはラストに相応しいのかもしれませんが、だったらもう少しユキの人物を掘り下げて描くべきだし、何より「国岡商店」の物語という側面もあるので、ラストはやっぱり社員との思い出も盛り込んでほしかった。

最後の最後のシーンが1997年のNHK大河ドラマ『毛利元就』っぽいなあと思ったのは筆者だけでしょうが…

 

筆者がもっとも残念に思ったのが、映画のクライマックスである日章丸事件のシーン。小説では日章丸(映画では日承丸)出発までの過程を、太平洋戦争中の船員の悲劇や、時の政治家のエピソードなども盛り込んでかなり緻密に書いていたのに対し、映画は時間がなかったからか、そのあたりはざっくりとカット。かなり食い足りなさがありました。

さらに、日章丸航海の緊張感。映画では「英国の軍艦と衝突寸前か!」というところに緊張感のピークがありましたが、小説では軍艦と衝突寸前のシーンの他にも、機雷を突破するために座礁ギリギリの浅瀬を航海するとかいった、より緊張感を煽るシーンがあったような記憶が。

映画版のように、一部カットせざるを得ないシーンをやむなくテキストのみの説明で済ませる(計2箇所)というのは、上映時間内にまとめるための苦肉の策としか言いようがないし、観客としては制作側に強引に「はい、テキストで説明したから、あとは各々理解しておいてね」と言われているような気がして、あまり好きな手法ではありません。もっとやりようはあるはず。

そういった不足点も含めて、まあ今さらですけど映画も前編・後編にできればよかったなあと。『永遠の0』が単行本1巻で144分の映画になったのに対し、『海賊とよばれた男』は単行本2巻で145分。さすがに短すぎますよね。

 

というわけで、まとめ。

145分という長丁場ではあるものの、退屈することは一切なく、手に汗握るシーンあり、登場人物たちのドラマに目頭熱くするシーンもありで、最初から最後まで楽しめる作品に仕上がっています。

公式サイトで経済界の大物がコメントを寄せているように、激動の日本を生き抜いた経営者のドラマとして楽しむのもありですし、はたらくおじさん(実際に可愛いおじさんがいっぱい)のドラマとして楽しむのもまた一興でしょう。

先に書いたように、背景やちょっとした登場人物のセリフから読み取るべき情報量の多い作品ですので、事前に小説版なり、公式サイトなりで予習してから鑑賞されることをおすすめします。

 

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