良い知らせと悪い知らせがある

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本当に良い映画も、良くない映画もレビューします。

三池崇史×木村拓哉『無限の住人』が2017年に公開。「マンガの実写映画化」問題を考える。

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筆者の厳選記事5選

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出典: http://wwws.warnerbros.co.jp/mugen/

三池崇史監督と木村拓哉のタッグで話題となっている、人気マンガの実写映画『無限の住人』。福士蒼汰、市原隼人、戸田恵梨香、北村一輝など、豪華な共演者もまた、注目度を高める要素のひとつだ。

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『十三人の刺客』『一命』と、傑作時代劇のアップデートに成功した三池崇史監督がてがけるのだから、個人的には大いに期待している(原作未読なのでバイアスがないのもあるが)。

 

なぜ「マンガの実写映画化」問題は起こるのか

さて、本作にかぎらず、「人気マンガの実写映画化」は、常に原作ファンのみならず映画ファンにとっても、心をざわつかせるパワーを秘めている。

2016年以降に公開が予定されている人気マンガの実写化映画のまとめがあったので、貼っておく。

www.animatetimes.com

個人的に気になるところでは、『3月のライオン』『東京喰種』『鋼の錬金術師』『銀魂』あたりか。

こういったマンガ原作の実写化のニュースが流れるたび、「またマンガの実写化か」「失敗するに決まっている」「もう原作レイプはやめてくれ」といった悲観的・否定的なコメントが、あっという間にTwitterなりブログなりに拡散する。

これはもはやマッチポンプというか、風物詩というか、制作側も意図してやっているように錯覚してしまう。『無限の住人』実写化のニュースに接したTwitter民の反応も、ざっと見て悲観的・否定的なコメントの方が割合多いようだ。

実写無限の住人の天津と槇絵の新ショットを見てなんだこれ…と更にガッカリ
でもたぶん見ると思う、レンタルで
何が原作通りで何が違うか
見ないで文句ばかりはポリシーに反する
既に文句ばかりだけどw

実写版無限の住人 百琳と槇絵はキャスト逆にしたほうがビジュアル合うと思った

実写版「無限の住人」がキムタクと聞いてとても不安だよ
凶くんがお気に入りなんだけど、ちゃんとあの髪型になってるかしら

うーん・・・演技力のある俳優さんをキャスティングしてるけれど、やっぱり原作のイメージとは違うくないか・・・?
つーか2時間で逸刀流の皆さんとやり合う→無骸流登場(江戸から加賀へ向かう?)まで収まるのか・・・?
むしろ人体バラバラになる剣戟が出来るんだろうか・・・⁈

実写、無限の住人は危険な香りしかしないwwwwwwww

「話題になればなるほど、制作側の思うつぼだな」などと思いつつ、原作を読んだことがあったり、思い入れがあったりする作品が実写化されるとなると、暗い気持ちになる方々が出てくるのも無理のない話である。

実際、同じく三池崇史監督、山崎賢人主演の『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』の実写映画化のニュースを聞いたときは、原作のファンである筆者も、期待はありつつ「本当に大丈夫か」とも思った。

こういったマンガ原作の実写化が毎度の話題になるのは、ここ数年、マンガを実写映画化する動きが活発になったからと言える。すでに人気のあるマンガを実写映画化することほど、コスパの良いことはない。

その流れで、人気マンガの実写映画が年々増えているからこそ、面白くない実写映画の割合も多くなる。逆に言えば、面白い方の実写映画も確実にある。むしろ、ここ数年のマンガ原作の実写映画は、成功例や傑作と呼べる作品が増えてきたようにも思う。

それなのに、マンガの実写映画化と聞くと、どうしても失敗作の方が頭に浮かび、それにつられて「今回の実写化もきっと失敗する」と暗い気持ちになってしまうのは、とても不幸なことだ。

とくに、キャスト発表の時点で「原作のキャラに合わない」「この人はイメージと違う」「漫画を映画にしちゃダメだって…」なんて声がいっせいにあがるが、(配役の好き嫌いのバイアスがあろうが)キャストが原作のイメージと合わない映画はダメな映画かといえば、そんなことはない。

キャスティングは面白い映画の大事な要素ではあるが、一部でしかなくて、それよりも重要なのは、映画的な完成度が高いかどうかなのである。実際に、キャスティングは完璧だったのに、面白くなかった映画は過去にいくつもある。

言葉を選ばずに言えば、キャスティングの良し悪しなど、原作ファンのたわごとでしかない。

筆者としては、キャスティングがどうのこうのはともかく、面白いマンガが面白い映画になってくれればもちろん嬉しいことだし、原作ファンの声なんか気にせず、どんどん実写化のチャレンジを続けていってほしいと願っている。

そこで今回は、筆者が選んだ「マンガ原作の実写映画の成功例」を挙げて行く。これらの作品をチェックして、少しでも実写化に前向きになっていただけると幸いである。

 

おもしろかったマンガ原作の実写映画3選

バクマン。

『無限の住人』に関しても、ファンがまず飛びつくのはキャスティングとビジュアルであった。「原作のキャラのイメージと違う」という声は必ず出てくるが、キャラクターもストーリーも原作に忠実な作品が面白いかというと、そうとも言えない。

『バクマン。』キャストの発表時は、「最高と秋人のキャストは逆じゃないのか」という声が大きかったが、大根仁監督は、見事にその下馬評を覆してみせた。

筆者は原作を読まないまま、この映画を鑑賞したが、そのときに痛烈に思ったことがある。ファンが期待するキャスティングと、監督のキャスティングは、必ずしも一致しないし、原作のファンがどれだけ「わたしが理想とする」キャスティングを練ろうが、プロの監督のキャスティングにはとうてい及ばない。

 

ちはやふる

これまた筆者は原作を読んでいないため、キャストが原作のイメージに合っているかどうかに関してはまったく気にならない。それぞれの配役に合った演技ができる役者であれば、だれだっていい。

キャスト発表時、批判の多かったちはや役の広瀬すず(よほど嫌っている人が多いのだろう。嫉妬?)は、結果的にとても良い演技をしていた。17歳の広瀬すずでなければ、少女らしいところと少年っぽいところを両方併せ持ったちはやは演じられなかっただろう。その対極として存在する松岡茉優の詩暢も、ミステリアスかつセクシーなライバル役として、華を添えた。結果、『ちはやふる』は上の句、下の句ともに素晴らしい作品となっている。

 

アイアムアヒーロー

キャラクターが原作のイメージに忠実、かつストーリーもある程度原作を踏襲し、かつ大成功を収めた作品となると、その数はぐっと少なくなる。だが、その諸条件を見事クリアした作品のひとつに『アイアムアヒーロー』が挙げられよう。

主要キャラのビジュアルはもちろん、アクションや演技も非常によくできていて、「日本製ゾンビ映画をつくる」というチャレンジを見事クリアした本作は、映画的に面白い。結果、2016年のマンガ原作映画のみならず、年間でもトップを争う傑作となっている。原作を読み込んでいる筆者としては、実写版の成功例の筆頭として、太鼓判を押したい一作である。

 

キャストは完璧だったのに面白くなかった映画

20世紀少年

 「原作そのものが風呂敷を広げすぎたわりにオチがサエなくて面白くない」という問題もあるが、キャスティングは完璧だったのに面白くなかった作品の代表が『20世紀少年』であろう。

映画『20世紀少年』の原作再現度は非常に高かった。当時のNAVERまとめではこんなページが作成されたほどである。

matome.naver.jp

「最終章」のラスト10分は原作と異なる展開となったものの、監督の堤幸彦氏は、キャラの配置やカメラアングルに至るまで、原作を完璧に映画に落とし込んだ。

だが、結果的にそれは面白い映画にはならなかった。マンガで有効な表現方法が、必ずしも映画でも有効とは限らない。堤幸彦監督は、そこを見誤った。

詳しくは、映画評論家の町山智浩氏の『20世紀少年』評をお聴きいただきたい。筆者がいだいた違和感を、完璧に言語化してくれている。

www.youtube.com

 

というわけで、まとめ。

最初は「キャスティングに文句を言って終わり、じゃなくて、ちゃんと映画を観てから批判しような」という記事を書きたかったのだが、いろいろ脱線してしまった感がある。今後、まとまればリライトするかもしれない。

とにかく、人気マンガの実写化にあたり、原作ファンが批判的な気持ちになるのはよくわかる。だが、これまで挙げてきたように、実写化に成功した実写映画もある以上、頭ごなしに「マンガの実写映画化は悪」と決めつけるのは早計であろう。

意外なキャスティングで成功した『バクマン。』もあれば、キャスティングもストーリーもほぼ原作を忠実に再現して、さらに実写映画としても成功を収めた『アイアムアヒーロー』もある。

多くの失敗作の屍を踏み越えて、「面白いマンガ原作の実写映画」の数は確実に増えてきている。ならば、『無限の住人』『鋼の錬金術師』『銀魂』だって、ひとまず公開されるまでは暖かく見守ろうではないか。

最後に、『GANTZ』『いぬやしき』の原作者である奥浩哉先生が、正論すぎる正論をツイートされているので、載せておく。