原作ファンは実写映画に親でも殺されたの?アンチ人気マンガ実写映画化の諸君に告ぐ。
Twitterを眺めていたら、TLにこんなツイートが流れてきまして。なんと50,000人近くにリツイートされているみたいで。
これってつまり俺たちがこれからやるハガレンやジョジョの実写化をいくら見に行っても原作者には一銭も入らないってことか?見に行く価値なくね?
— 塵がない (@zUsDz1pox2tUDBf) 2016年11月16日
pic.twitter.com/SMzKm2FkZG
なんでそんなに実写映画を憎んでんの
まあ、気持ちはわからないでもないですよ。ぼくだって『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』が実写映画化されると聴いたときは、ケツの穴にツララを突っ込まれた気分でしたから。
でも、「実写化をいくら見に行っても原作者には一銭も入らないってことか?見に行く価値なくね?」というツイートに対し、50,000人もリツイートしてるって異常事態は、いち映画ファンとしては看過できないんですよねえ…。
「なんでそんなに実写映画を毛嫌いしてんの?映画関係者に親でも殺されたの?」
全員が全員、共感してリツイートしてるわけではないにしろ。
本当に「実写化をいくら見に行っても原作者に一銭も入らない」と思ってリツイートしたんなら、もっと視野を広く持ったほうがいいし、実写化を「見に行く価値がない」とするスタンスこそ、原作をささげた作者の気持ちを踏みにじっていると思いますけどね。
「原作者に一銭も入らない」ってことはない
件(くだん)のツイートに対するリツイートのなかに、実写映画の関連グッズの売上についての言及がありますが、まあ「売上の何%が原作者に還元される」とか、契約上の規定でしょうから、そういうのはわかりません。
でも、実写映画がヒットすることで、否、ヒットしなくても話題となることで、たとえば単行本が売れて、その売上が原作者に還元されることはあるでしょう。
参考になるデータかどうかはわからないけど、実写映画化されたマンガが、映画化の後も売れ続けているかどうかを、Amazonの売上ランキングで調べてみました。
昨年実写版が公開された『テラフォーマーズ』は、映画レビューサイト「Yahoo!映画」で5.0点満点中の2.4点と、決して絶賛されている実写映画ではありません。ぼくも興味本位で観に行っきましたが、あまり面白い映画だとは思えず…。
では、コミック第1巻(デジタル版)のAmazonのランキングはというと、実写映画が公開となった2016年4月末の前後で、ランキングが上昇(グラフの下に行くほどランキングは上)。公開期間中はずっと上位をキープし続け、その後ゆるやかにランキングを上下しています。
出典:http://mnrate.com/item/aid/B00C9DYZFC
今回の記事ではあんまり参考にならないかもしれませんが、ドラマで記録的な視聴率を叩き出している『逃げるは恥だが役に立つ』のコミック第1巻は、ドラマ化決定のニュースが流れた2016年の7月あたりで、ランキングが急上昇しています。
出典:http://mnrate.com/item/aid/B00GWVP77W
実写映画がヒットすることで、単行本の売上がアップすることは間違いないし、このことで「原作者に一銭も入らない」ということは、まずない。
というか、いち映画ファンの立場から言わせてもらえば、映画の出来はどうであれ、年に1、2回しか映画を観ないようなライト層が、話題性のある実写映画にお金を落としてくれて、それで映画業界が潤って、また来年面白い映画が作られるんだったら、それ大歓迎だから。
原作ファンこそ実写映画を観に行くべし
ぼくが一番ひっかかるのが、「見に行く価値がない」とか「絶対行かない」とかいう意見。「わざわざ宣言することないでしょ、まだ公開もされてないのに」って思いますけどね。
それに、さっき書いたように、実写映画がヒットすることで、それが巡り巡って(たとえ利益配分が少ないにせよ)原作者の利益に還元されるのなら、原作を愛しているファンほど何回も観に行くべきでしょ。
たとえ実写映画がつまらない、面白くない出来だったとしても、原作ファンなら「でも原作はめっちゃ面白いから!映画観た人は原作も読んで!」ってシェアすることで、よりファンの輪を広げることだってできるじゃん。今はSNSでいくらでも拡散できるんだから、ツイートするくらいやってやりましょうよ。
「映画は観に行かない、けど映画を叩く」って、それこそ原作ファン失格じゃないですかね。
あと「漫画のイメージが崩れる」なんて批判もあるけど、たぶん原作通りに作っても批判するでしょ…。イメージが崩れるなんて、批判してるあなたや原作ファンの被害妄想だからそれ。
『デビルマン』だって、『ドラゴンボール』だって、実写映画はお世辞にも面白かったとは言えなかったけど、「漫画のイメージ」はまったく崩れてないし、いまだに傑作マンガとして燦然と輝いているじゃないですか。原作ファンのあなたが勝手にイメージ崩しちゃってどうすんの。
批判するべきは出版社やマスメディアだろ
リツイートでも言及されているけど、原作者の契約料の問題、原作者への利益還元こそ指摘するべきですよね。実写映画化されること自体に罪はないし。
さらにこんなリツイートもありまして。
批判が多いのになぜ続くのか特集して
余計に批判増やしてどうするのかな
「余計に批判増やしてどうするのかな」。その批判の矛先はマスメディアに向けられるべきでしょう。マスメディアは、そういった原作ファンによる実写映画への批判をニュースのネタにして、原作者の契約料とか、利益還元とか、本当に触れるべき問題についてはまったく言及してないんですよ。
原作ファンの批判は、実写映画化されることや、映画の制作者や主演のアイドルやジャニーズに向けられるものじゃなくて、原作者に利益を還元しない出版社や、問題の本質をそらしているマスメディアにこそ向けられるべき。
それと勘違いしてほしくないのは、できあがった映画を観た結果、「映画的に完成度が低く、面白くなかった」のであれば、それは大いに酷評して結構ってこと。表現というのは、面白くないなら面白くないと批判されるべきものですから。
実写化を手がける制作者のみなさんには、原作をしっかり読み込んだ上で、映画的に完成度の高い作品に仕上げてほしい。
それについてはこちらの記事を。
実写映画にがっかりしてやさぐれるのは勝手だけど、実写映画は原作者が新しいファンを呼び込む宣伝になるし、実写映画がヒットすれば、映画業界はこれからも映画を作り続けられる。
実写映画化の話が立ち上がるたび、まるで風物詩のように原作ファンが文句を垂れるって、いつまで続けるのって感じだし、そろそろやめにしましょう。
できあがった映画をその目で確かめて、面白かったなら「面白かった」。面白くなかったらなら「面白かった」。それでいいじゃないですか。
こんな記事も書いてます。