良い知らせと悪い知らせがある

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本当に良い映画も、良くない映画もレビューします。

映画『ダンケルク』は戦場のマッドマックス!感情移入より戦場の没入感!!

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筆者の厳選記事5選

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こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。

ようやく観ることが叶いました。

今回とりあげる映画はクリストファー・ノーラン監督の最新作『ダンケルク』です。

どうしてもIMAXの大きなスクリーンで観たかったので、公開から少し遅れてしまいました。

ちょうど新宿で仕事の打ち合わせがあった木曜日に、観てきましたよ~2回。

それでは、感想・レビューへとまいりましょう。

 

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映画『ダンケルク』

youtu.be

公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/

【原題】Dunkirk

【日本での公開】2017年9月9日

【上映時間】106分

【監督】クリストファー・ノーラン

【脚本】クリストファー・ノーラン

【出演】 フィン・ホワイトヘッド、フィン・ホワイトヘッドトム、グリン=カーニージャック・ロウデン、トム・ハーディほか

 

Yahoo!映画の評価平均点 3.75点

Filmarksの評価平均点 4.0点

僕の評価は100点中 98点

 

さらっとあらすじを

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1940年、ドイツ軍の猛攻によりフランス北端の海辺の町「ダンケルク」に追い詰められた英仏連合軍40万人の将兵たち。

イギリス軍はダンケルクから将兵たちを救い出し、ドーバー海峡を横断する救出作戦を敢行する。

物語はダンケルクに追い詰められ、救出を待つイギリス軍の若き陸軍兵士立ち、救出作戦に志願した遊覧船オーナーの親子、救出作戦を空から支援する空軍パイロットたちの、それぞれ異なる時間軸からの視点で進行する。

果たして、史上最大の救出作戦は成功するのか?

 

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『ダンケルク』の歴史的背景

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https://www.warhistoryonline.com/war-articles/dunkirk-evacuation-interactive-map.html

『ダンケルク』は、第二次世界大戦の西部戦線(欧州)にて実際に行われた、「ダイナモ作戦」の一部始終を描いた映画です。

「ダイナモ作戦」はヒトラー率いるドイツ軍のフランス侵攻によって、フランスの工業都市「ダンケルク」へと追いつめられた英仏連合軍が、ドーバー海峡を渡ってイギリス本国へと撤退する作戦。

空軍がドイツ軍の猛攻を防ぎつつ、海軍の輸送船から小型艇、駆逐艦、徴用した民間船など、ありとあらゆるすべてを動員しました。

このダイナモ作戦で、イギリス軍は武器や戦車などの重装備のほとんどを放棄せざるを得ず、深刻な兵器不足となりますが、33万人の将兵を救った「人的資源の保全」という点では大きな成功を収めるに至ります。

ちなみに、こういった予備知識を入れてから見るか、入れずに見るかですが、最初にある程度の解説はあるので、まったくの知識ゼロでも観やすいかと思います。

ただし……あんまり信じたくないけど、「なんでイギリスとドイツが戦ってるの?」レベルの常識すら持ち得ない人もいるわけで。

せめて「第二次世界大戦でイギリスはどの国と戦ったか」「第二次世界大戦時のイギリスはどの国と友好関係にあったか」くらいは知っておいた方がいいのかな、と。

 

極上の戦場”体験”映画

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僕個人的には、戦場の兵士たちを描いた戦争映画って苦手なんですよね。

残酷描写やゴア描写が苦手なので、かの名作『プライベート・ライアン』も観てないですし。

さらに、やたらと「エモい」主人公が出てくるのも苦手だなあと(日本映画にありがち)。

そんな僕が観た『ダンケルク』ですが、結論から言うと今年トップクラスに傑作!

ひとことで言うと、『ダンケルク』は戦場”体験”映画でした。

「いつ銃弾が飛んでくるかわからない」

「いつ爆撃機の空襲が来るかわからない」

「どこにドイツ軍が潜んでいるかわからない」

圧倒的没入感!!

『ダンケルク』は戦場の極限状態を、名も無き兵士たちと共に味わう作品です。

またハンス・ジマーの音楽が緊張感を煽りまくってて最高なんだ、これが。

のっけから、フィン・ホワイトヘッド演じる主人公・トミー二等兵のチームが銃撃される衝撃のシーンから始まり、命からがら逃げ切ったダンケルクの砂浜には、行き場を失い救出作戦を待つ「ほぼ丸腰」の英仏軍兵士数万人の群れ。

当然、ドイツ軍の爆撃機”スツーカ”の空襲には一切の抵抗ができないわけです。

空襲に怯える英仏軍の兵士と同じように、緊張してしまいましたね。

あの、けたたましいスツーカの威嚇用サイレンが聞こえたときの恐怖ときたら。

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「キィィィーーーン」って音ね。

スクリーンのなかの兵士たちと同じように緊張し、恐怖してたら、そりゃあ観終わった後に席から立てなくなるくらい、体もこわばりますよ。

そう考えると、「ダイナモ作戦」の成否を知らないほうが楽しめるかも。

一方で、凄惨な戦場であるはずが、死体が一切の欠損なくきれいだったり、血の量が少なかったりと言う点では、多少「リアルさ」はなかったかもしれませんね。

まあ、そこまでリアリティーラインを上げてしまうと、「グロい」という感想だけが残って、本作で得られたカタルシスは味わえなかったかも。

 

感情移入できない映画は低評価?

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すでに『ダンケルク』を観た多くの方が指摘されていますが、明確なストーリーのようなものはありません。

『ダンケルク』は主人公の兵士が「どのように戦場で生きたか(死んだか)」「戦場でどのように成長していったか」とか、そんな話ではなかったですね。

あえて言うと『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のように、アクションひとつひとつにキャラクターの背景や心情だったり、人間関係の変化だったりが描かれていました。

戦場を描いた映画って、「アクションがストーリーを語る」がもっとも表現できる舞台なのではないかと。

だからこそ、戦場”体験”映画というのがしっくりくる。

僕はトム・グリン=カーニー演じるピーターが、とある大事な人の死に際して、つとめて冷静に「いま自分がするべき行動」に徹したシーンと、彼の行動を見て「それでいいんだ」と静かに頷くマーク・ライランス演じるドーソン父の姿に心を打たれましたねえ。

 

こういった体験型の映画に必ずあるのが、「まったく感情移入できなかったからつまらない」という感想。

これねえ……

前から思ってるんですけど、「映画って感情移入できないとダメなんですか?」ってことなんですよ。

しかも「感情移入できないから低評価」っていう意味がわからない。

それ「泣けないから面白くなかった」って言ってるようなもんじゃないか……

そんなに感情移入したかったら、主人公が戦場で「どうして同じ人間同士で殺し合うんだあああああーーー!!ウワーーーーー!!」などと泣き叫ぶ映画でも観てればいいのである。

でもね、「感情移入できないところはなかったのか?」というと、そんなことはないですよ。

中盤、ケネス・ブラナー演じるボルトン海軍中佐の「故国だ」の台詞に思わず涙。

国家という意識が薄らぎつつある日本に住む者として、そんな感情が沸き起こる瞬間なんて、一生に一度あるかないか、じゃないでしょうか。

羨ましさとともに、危険を冒して救助に来てくれた英国旗の船団に、そこはかとなくカタルシスを感じましたよ。

他にも、ラストでトミー二等兵が読んだ新聞記事の、英国首相・チャーチルの演説。

「いかなる犠牲を払っても、 我々の島国(イギリス)を守るであろう。
海岸で、上陸地点で、平原と街路で、そして高地で戦う。
我々は、決して降伏しない」※

つい今しがた、命からがらダンケルクから逃げ帰ってきた兵士が読む、「いかなる犠牲を払っても」「決して降伏しない」の言葉の絶望感たるや。

血の通った一人の若者も、戦場では駒に過ぎないのかと。

うつろなトミー二等兵の表情と、燃えさかるスピットファイアは強烈にまぶたに焼き付きましたね……

ダイナモ作戦で多くの武器と兵士を失ったイギリス軍ですが、そこで戦争が終わるはずがなくて。

実際の第二次大戦における英独の戦いは、「バトル・オブ・ブリテン」にまで発展していきます。

もしかしたら、トミーもコリンズもまた戦場の最前線に赴き、若い命を散らしたのかと思うと胸が張り裂けそう。

※チャーチルの演説、および戦局はこちらのサイトに詳しいのでぜひ。

www.denkiworld.com

 

時間軸の変化は少しわかりづらいかも

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これも指摘している方が多い部分ですが、本作では異なる時間軸の3つのストーリーが同時進行していきます。

 

【ダンケルク編 作戦の1週間前】

トミー二等兵たち英国陸軍が、ダンケルクで救出作戦を待つエピソード

【ドーバー海峡編 作戦の1日前】

英国の遊覧船のドーソン親子が、ダンケルクに向かう船上のエピソード

【イギリス空軍編 作戦の1時間前】

英空軍のスピットファイア3機がダンケルクへ向かう途上のエピソード

 

「ダイナモ作戦当日」を終点として、異なる時間軸から別々の主人公を擁するストーリーが展開します。

あえてたとえるなら、別々の主人公のストーリーが最終的に結実する『ドラゴンクエストIV』風の構成なのかなあと思いましたが、『ダンケルク』はそれ以上にかなり複雑に絡み合っています。

これが初見ではかなりわかりづらいというか、わかろうとすると本編が入ってこないというか。

僕もほとんど構成に関する前情報は入れていなかったので、キリアン・マーフィー演じる英国兵とトミー二等兵が出会う夜のシーンでようやく事態を把握しましたね。

それでも最終的には上手く結実したのか、いろいろ辻褄が合っていないところがあるのか、2回の鑑賞でも完全に理解できておりません。

もしかしたら、1回めの鑑賞はトミー二等兵視点で、2回めの鑑賞はドーソン親子視点で、3回めの鑑賞はファリア視点で、4回めの鑑賞でようやくまるっと理解できる……のかもしれない。

 

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というわけで、まとめ

僕は新宿のトーホーシネマズのIMAXで鑑賞しましたが、スクリーンの大きさで没入感も違ってくると思います。

これはもう遠征してでも、109シネマズ大阪のエキスポIMAXで観たいですねえ~

僕の行きつけである立川市のシネマシティでは、『ダンケルク』は極爆上映でもないのが少々残念ではあります。

『ダンケルク』で戦場に没入するなら、ぜひIMAX以上の大きさのあるスクリーンで!

そして最後にこれだけは言いたい!

『ダンケルク』をIMAXで観てるときに、途中で席を立って目の前を通過していくお客様がいたんですが……

「頭を下げろ!撃たれて死ぬぞ!!」と言いたくなりましたね。

没入しすぎて気持ちは一兵士でしたから。

『ダンケルク』を観る前はオシッコ絞り出して来い!!!

 

輸入盤のサントラはこちら