映画『ザ・コンサルタント』の感想、レビュー。「ナメてた会計士が実は殺人マシーン」でした映画。
こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。
今日も新作映画を一本観てまいりました。
『バットマンvsスーパーマン/ジャスティスの誕生』でバットマンを演じたことでもおなじみ、ベン・アフレック主演の『ザ・コンサルタント』でございます。
いつものように立川シネマシティで鑑賞しましたが、極音上映ではないのに銃声がビリビリ響く映画でした。これ、極上爆音上映でやったらどうなんですかね??そこまで『ザ・コンサルタント』に注目しているお客様は少ないのかな...
まあそれはいいとして。さっそくレビューへとまいりましょう。
映画『ザ・コンサルタント』
【原題】The Accountant
【公開】2016年10月14日/アメリカ
【上映時間】128分
【監督】ギャヴィン・オコナー
【脚本】ビル・ドゥビューク
【出演】ベン・アフレック、アナ・ケンドリック、J・K・シモンズ
【あらすじ】田舎町のしがない会計士クリスチャン・ウルフには、世界中の危険人物の裏帳簿を仕切り、年収10億円を稼ぎ出す命中率100%のスナイパーというもう一つの顔があった。そんなウルフにある日、大企業からの財務調査の依頼が舞い込んだ。ウルフは重大な不正を見つけるが、その依頼はなぜか一方的に打ち切られ、その日からウルフは何者かに命を狙われるようになる。
映画.comの評価平均点 3.7点 / 全44件
Yahoo!映画の評価平均点 3.88点 / 全151件
僕の評価は100点中 70点
俺たちの大好きな「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした」ジャンルの最新作ですね。観た感想をざっくり言うと...
親父がイチバン狂っとるやないか。
『ザ・コンサルタント』の面白かったところ
主人公・クリスチャンのたたずまい
何といってもベン・アフレック演じる、主人公のクリスチャンですよ。スーパースターを演じながら、一方で「死んだ目」の演技もできる芸達者ぶり。謎多き会計士の雰囲気づくりにバッチリ合ってるし、会計士にしては無駄にデカイ体も裏稼業感が出ててグッド。
さらに、「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした」ジャンルにおける近年の大傑作、デンゼル・ワシントン主演の『イコライザー』でもやってたような、「ハイ、一般ピーポーに見えて実はこの人、狂ってますから」描写が、後半からの殺人マシーンぶりを否応なく期待させるんですよね。実際、その後の殺人マシーン発揮ぶりはすこぶる爽快感がありました。
はたらくおじさん映画でもある『イコライザー』
小道具や衣装なんかにもこだわりがあって。「スーツはビシっと決めてるんだけどショルダーバッグ」とか、「おもな私服はチェックのネルシャツにジーパン」っていうたたずまい。ファッションには無頓着だけどガンマニア(武器オタク)で絵画コレクターという二面性、そういうギャップもまた、キャラクターの魅力をグッと引き出す要素としてしっかり仕事してました。これで主人公を好きにならないわけがない!
オフビートなギャグ
あんまり多くはないんですが、「本人たちはいたってマジメなんだけど、それが逆に笑いを誘う」シーンがところどころあって。
個人的には、クリスチャンがはじめてマフィア相手に「殺人マシーンとしての真価を発揮するシーン」が最高なんですよ。それまで会計士と顧客の関係で接していた老夫婦の前で、無敵の暗殺術の一端を披露するわけですが、老夫婦からしてみたら、マフィアに襲われる意味もわからなければ、まさか会計士がマフィアをぶち殺すなんてことも想定外。
その老夫婦の驚きの表情と、マフィアをぶちのめして見せたクリスチャンの「あっ、やっちまった」の表情が、「観客を笑わせようとしているわけじゃないのに思わず笑っちゃうシーン」でして。ここはもう必見であります。
ちなみにクリスチャンが使う格闘術は「プンチャック・シラット」と呼ばれるインドネシアの格闘技。日本ではほとんど知られていないマイナー武術ですが、イギリス軍が近接格闘術として採用しており、世界大会も開かれるほどらしいです。
YouTubeに動画が公開されていたのでアップしておきますね。
見事な伏線回収
『イコライザー』のときもそうだったんですが、派手なアクションを期待して観に行ったら、すぐに戦闘がはじまるわけではなく、淡々と日常が描かれる。ただ、その「日常」こそ、キャラクターに深みをもたせる重要なシーンであり、後半に明かされる「真実」の伏線になっていくわけです。退屈に感じるけど、決してボンヤリ観てるわけにもいかない、必見の前半部分。
本作『ザ・コンサルタント』も前半はそんな感じ。最初は回想シーンからはじまるわけですが、ただの回想ではなく、主人公のクリスチャン(幼少期)が、「世間一般からしてみたら厄介で可哀想な自閉症を持つ子ども」という印象を与えながら、実は「ある分野では常人のそれを遥かに超えた才能を発揮する」という、観客からしてみたら「それが欲しかったんだよ!」というポイントをしっかり見せてくれる。
いわゆる「サヴァン症候群」ってやつですね。そこに「モハメド・アリのジグソーパズル」っていうのがまた憎い演出じゃないですか。アリの有名な名言に「Impossible is nothing.」というものがありましてね。
この映画が伝えたいメッセージというかテーマというか、まさにこの名言に尽きるわけですよ。「人と違ってようが、当たり前のことが当たり前でなかろうが、人間ひとりひとりに可能性はある」と。ラストにもう一度モハメド・アリのジグソーパズルが登場するシーンでは、ちょっと鳥肌が立ちましたね。その直後に明らかになる「真実」も含めて。
『ザ・コンサルタント』は主要な登場人物のひとりひとりが二面性を持ち、それが徐々に明らかになっていきます。そして終いには「実はみんなどこかで繋がってた」という結末に向かっていく。
あらゆるシーンに伏線が散りばめられているので、初見では見逃すところも多いかと思います。初回の鑑賞が面白かったら、ぜひ2回めで「答え合わせ」をしたくなる、そんな映画です。
『ザ・コンサルタント』のツッコミたくなったところ
まあ、「残念なところ」はほとんどありませんでした。派手なアクションのない前半が少し退屈かなあ~なんて思いましたけど、前述したクリスチャンの日常のシーンも、ちょっと長く感じた回想シーンも、後々の伏線回収とラストの「グッと来るタネ明かし」に必須なので、あれは避けては通れない。
強いて「ここはツッコミたくなるよね」ってところを挙げると、クリスチャンの親父が息子たちに殺人技術を施すようになった理由ですかね。
「自閉症の息子が厳しい世の中でも生きていけるように」って理由で、まさか殺人マシーンに育てるとは!しかも弟まで!「いくら軍人肌の親父とは言え、さすがに脳筋が過ぎるだろう」なんて思っちゃいました。
登場人物のなかでイチバン狂ってたのは、実は親父だったのでは...
そこに1980~90年代に流行したマッチョなアクション映画っぽいテイストというか、投げっぱなしジャーマン感というか、じゃっかん本作の全体的な雰囲気とのギャップを感じたので、あえて「残念なところ」ではなく、「ツッコミたくなったところ」としました。
というわけで、まとめ。
Twitterなんかを眺めてますと、同時期に公開となった巨匠・マーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙‐サイレンス‐』に注目が集まっているようですね。
4DXを超えた「“GOD”X」を体験せよ。映画『沈黙 サイレンス』の感想、レビュー
窪塚洋介、塚本晋也といった日本人俳優の出演や、ライムスター宇多丸師匠の次のウォッチ作品になったこともあり、僕も興味のある一本ではありますが、『ザ・コンサルタント』も捨てがたいですよ!ぜひ劇場でご鑑賞いただきたい!
「ナメてた相手が...」映画といえば、こっちも捨てがたい