良い知らせと悪い知らせがある

良い知らせと悪い知らせがある

本当に良い映画も、良くない映画もレビューします。

映画『ダンケルク』は戦場のマッドマックス!感情移入より戦場の没入感!!

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こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。

ようやく観ることが叶いました。

今回とりあげる映画はクリストファー・ノーラン監督の最新作『ダンケルク』です。

どうしてもIMAXの大きなスクリーンで観たかったので、公開から少し遅れてしまいました。

ちょうど新宿で仕事の打ち合わせがあった木曜日に、観てきましたよ~2回。

それでは、感想・レビューへとまいりましょう。

 

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映画『ダンケルク』

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公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/

【原題】Dunkirk

【日本での公開】2017年9月9日

【上映時間】106分

【監督】クリストファー・ノーラン

【脚本】クリストファー・ノーラン

【出演】 フィン・ホワイトヘッド、フィン・ホワイトヘッドトム、グリン=カーニージャック・ロウデン、トム・ハーディほか

 

Yahoo!映画の評価平均点 3.75点

Filmarksの評価平均点 4.0点

僕の評価は100点中 98点

 

さらっとあらすじを

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1940年、ドイツ軍の猛攻によりフランス北端の海辺の町「ダンケルク」に追い詰められた英仏連合軍40万人の将兵たち。

イギリス軍はダンケルクから将兵たちを救い出し、ドーバー海峡を横断する救出作戦を敢行する。

物語はダンケルクに追い詰められ、救出を待つイギリス軍の若き陸軍兵士立ち、救出作戦に志願した遊覧船オーナーの親子、救出作戦を空から支援する空軍パイロットたちの、それぞれ異なる時間軸からの視点で進行する。

果たして、史上最大の救出作戦は成功するのか?

 

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『ダンケルク』の歴史的背景

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https://www.warhistoryonline.com/war-articles/dunkirk-evacuation-interactive-map.html

『ダンケルク』は、第二次世界大戦の西部戦線(欧州)にて実際に行われた、「ダイナモ作戦」の一部始終を描いた映画です。

「ダイナモ作戦」はヒトラー率いるドイツ軍のフランス侵攻によって、フランスの工業都市「ダンケルク」へと追いつめられた英仏連合軍が、ドーバー海峡を渡ってイギリス本国へと撤退する作戦。

空軍がドイツ軍の猛攻を防ぎつつ、海軍の輸送船から小型艇、駆逐艦、徴用した民間船など、ありとあらゆるすべてを動員しました。

このダイナモ作戦で、イギリス軍は武器や戦車などの重装備のほとんどを放棄せざるを得ず、深刻な兵器不足となりますが、33万人の将兵を救った「人的資源の保全」という点では大きな成功を収めるに至ります。

ちなみに、こういった予備知識を入れてから見るか、入れずに見るかですが、最初にある程度の解説はあるので、まったくの知識ゼロでも観やすいかと思います。

ただし……あんまり信じたくないけど、「なんでイギリスとドイツが戦ってるの?」レベルの常識すら持ち得ない人もいるわけで。

せめて「第二次世界大戦でイギリスはどの国と戦ったか」「第二次世界大戦時のイギリスはどの国と友好関係にあったか」くらいは知っておいた方がいいのかな、と。

 

極上の戦場”体験”映画

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僕個人的には、戦場の兵士たちを描いた戦争映画って苦手なんですよね。

残酷描写やゴア描写が苦手なので、かの名作『プライベート・ライアン』も観てないですし。

さらに、やたらと「エモい」主人公が出てくるのも苦手だなあと(日本映画にありがち)。

そんな僕が観た『ダンケルク』ですが、結論から言うと今年トップクラスに傑作!

ひとことで言うと、『ダンケルク』は戦場”体験”映画でした。

「いつ銃弾が飛んでくるかわからない」

「いつ爆撃機の空襲が来るかわからない」

「どこにドイツ軍が潜んでいるかわからない」

圧倒的没入感!!

『ダンケルク』は戦場の極限状態を、名も無き兵士たちと共に味わう作品です。

またハンス・ジマーの音楽が緊張感を煽りまくってて最高なんだ、これが。

のっけから、フィン・ホワイトヘッド演じる主人公・トミー二等兵のチームが銃撃される衝撃のシーンから始まり、命からがら逃げ切ったダンケルクの砂浜には、行き場を失い救出作戦を待つ「ほぼ丸腰」の英仏軍兵士数万人の群れ。

当然、ドイツ軍の爆撃機”スツーカ”の空襲には一切の抵抗ができないわけです。

空襲に怯える英仏軍の兵士と同じように、緊張してしまいましたね。

あの、けたたましいスツーカの威嚇用サイレンが聞こえたときの恐怖ときたら。

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「キィィィーーーン」って音ね。

スクリーンのなかの兵士たちと同じように緊張し、恐怖してたら、そりゃあ観終わった後に席から立てなくなるくらい、体もこわばりますよ。

そう考えると、「ダイナモ作戦」の成否を知らないほうが楽しめるかも。

一方で、凄惨な戦場であるはずが、死体が一切の欠損なくきれいだったり、血の量が少なかったりと言う点では、多少「リアルさ」はなかったかもしれませんね。

まあ、そこまでリアリティーラインを上げてしまうと、「グロい」という感想だけが残って、本作で得られたカタルシスは味わえなかったかも。

 

感情移入できない映画は低評価?

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すでに『ダンケルク』を観た多くの方が指摘されていますが、明確なストーリーのようなものはありません。

『ダンケルク』は主人公の兵士が「どのように戦場で生きたか(死んだか)」「戦場でどのように成長していったか」とか、そんな話ではなかったですね。

あえて言うと『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のように、アクションひとつひとつにキャラクターの背景や心情だったり、人間関係の変化だったりが描かれていました。

戦場を描いた映画って、「アクションがストーリーを語る」がもっとも表現できる舞台なのではないかと。

だからこそ、戦場”体験”映画というのがしっくりくる。

僕はトム・グリン=カーニー演じるピーターが、とある大事な人の死に際して、つとめて冷静に「いま自分がするべき行動」に徹したシーンと、彼の行動を見て「それでいいんだ」と静かに頷くマーク・ライランス演じるドーソン父の姿に心を打たれましたねえ。

 

こういった体験型の映画に必ずあるのが、「まったく感情移入できなかったからつまらない」という感想。

これねえ……

前から思ってるんですけど、「映画って感情移入できないとダメなんですか?」ってことなんですよ。

しかも「感情移入できないから低評価」っていう意味がわからない。

それ「泣けないから面白くなかった」って言ってるようなもんじゃないか……

そんなに感情移入したかったら、主人公が戦場で「どうして同じ人間同士で殺し合うんだあああああーーー!!ウワーーーーー!!」などと泣き叫ぶ映画でも観てればいいのである。

でもね、「感情移入できないところはなかったのか?」というと、そんなことはないですよ。

中盤、ケネス・ブラナー演じるボルトン海軍中佐の「故国だ」の台詞に思わず涙。

国家という意識が薄らぎつつある日本に住む者として、そんな感情が沸き起こる瞬間なんて、一生に一度あるかないか、じゃないでしょうか。

羨ましさとともに、危険を冒して救助に来てくれた英国旗の船団に、そこはかとなくカタルシスを感じましたよ。

他にも、ラストでトミー二等兵が読んだ新聞記事の、英国首相・チャーチルの演説。

「いかなる犠牲を払っても、 我々の島国(イギリス)を守るであろう。
海岸で、上陸地点で、平原と街路で、そして高地で戦う。
我々は、決して降伏しない」※

つい今しがた、命からがらダンケルクから逃げ帰ってきた兵士が読む、「いかなる犠牲を払っても」「決して降伏しない」の言葉の絶望感たるや。

血の通った一人の若者も、戦場では駒に過ぎないのかと。

うつろなトミー二等兵の表情と、燃えさかるスピットファイアは強烈にまぶたに焼き付きましたね……

ダイナモ作戦で多くの武器と兵士を失ったイギリス軍ですが、そこで戦争が終わるはずがなくて。

実際の第二次大戦における英独の戦いは、「バトル・オブ・ブリテン」にまで発展していきます。

もしかしたら、トミーもコリンズもまた戦場の最前線に赴き、若い命を散らしたのかと思うと胸が張り裂けそう。

※チャーチルの演説、および戦局はこちらのサイトに詳しいのでぜひ。

www.denkiworld.com

 

時間軸の変化は少しわかりづらいかも

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これも指摘している方が多い部分ですが、本作では異なる時間軸の3つのストーリーが同時進行していきます。

 

【ダンケルク編 作戦の1週間前】

トミー二等兵たち英国陸軍が、ダンケルクで救出作戦を待つエピソード

【ドーバー海峡編 作戦の1日前】

英国の遊覧船のドーソン親子が、ダンケルクに向かう船上のエピソード

【イギリス空軍編 作戦の1時間前】

英空軍のスピットファイア3機がダンケルクへ向かう途上のエピソード

 

「ダイナモ作戦当日」を終点として、異なる時間軸から別々の主人公を擁するストーリーが展開します。

あえてたとえるなら、別々の主人公のストーリーが最終的に結実する『ドラゴンクエストIV』風の構成なのかなあと思いましたが、『ダンケルク』はそれ以上にかなり複雑に絡み合っています。

これが初見ではかなりわかりづらいというか、わかろうとすると本編が入ってこないというか。

僕もほとんど構成に関する前情報は入れていなかったので、キリアン・マーフィー演じる英国兵とトミー二等兵が出会う夜のシーンでようやく事態を把握しましたね。

それでも最終的には上手く結実したのか、いろいろ辻褄が合っていないところがあるのか、2回の鑑賞でも完全に理解できておりません。

もしかしたら、1回めの鑑賞はトミー二等兵視点で、2回めの鑑賞はドーソン親子視点で、3回めの鑑賞はファリア視点で、4回めの鑑賞でようやくまるっと理解できる……のかもしれない。

 

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というわけで、まとめ

僕は新宿のトーホーシネマズのIMAXで鑑賞しましたが、スクリーンの大きさで没入感も違ってくると思います。

これはもう遠征してでも、109シネマズ大阪のエキスポIMAXで観たいですねえ~

僕の行きつけである立川市のシネマシティでは、『ダンケルク』は極爆上映でもないのが少々残念ではあります。

『ダンケルク』で戦場に没入するなら、ぜひIMAX以上の大きさのあるスクリーンで!

そして最後にこれだけは言いたい!

『ダンケルク』をIMAXで観てるときに、途中で席を立って目の前を通過していくお客様がいたんですが……

「頭を下げろ!撃たれて死ぬぞ!!」と言いたくなりましたね。

没入しすぎて気持ちは一兵士でしたから。

『ダンケルク』を観る前はオシッコ絞り出して来い!!!

 

輸入盤のサントラはこちら

映画『散歩する侵略者』愛は地球を救う!エンドロールに”サライ”を聴け!!

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こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。

映画界隈はクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』が好評のようですね。

僕の方はどうしてもIMAXの大画面と爆音で鑑賞したいため、明日までお預けでございます……

さて、そんな折に観てきた映画は、黒沢清監督の最新作『散歩する侵略者』です。

黒沢清監督といえば、アクが強くて「好きな人は好き」という作品が多いですね。

僕は去年の『クリーピー 偽りの隣人』が初黒沢清監督作品でしたが、割りと好きな映画だったので『散歩する侵略者』も観たいと思っておりました。

では、感想・レビューへとまいりましょう。

 

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映画『散歩する侵略者』

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【原題】散歩する侵略者

【日本での公開】2017年9月9日

【上映時間】118分

【監督】黒沢清

【脚本】田中幸子、黒沢清

【出演】長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己ほか

 

Yahoo!映画の評価平均点 3.33点

Filmarksの評価平均点 3.7点

僕の評価は100点中 68点

 

さらっとあらすじを

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加瀬鳴海(長澤まさみ)は、数日間行方不明となっていた夫・加瀬真治と病院で再開する。

だが、夫はまるで人格が変わったかのように、穏やかで優しくなっていた。

仕事も辞め、日々散歩するだけの夫の変わり果てた姿に、鳴海は戸惑うばかりだった。

その頃、一家惨殺事件を追っていたジャーナリストの桜井は、天野(高杉真宙)という謎の若者と出会う。

天野は自ら「地球を侵略しに来た宇宙人」と名乗り、桜井とともに惨殺事件の鍵を握る女子高校生・立花あきら(恒松祐里)を探し始める。

 

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黒沢清監督作品だ、心して観よ

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僕は『クリーピー』が初黒沢清映画というニワカですが、万人向けでない非常にクセのある映画を撮る人だと思っています。

ジャンルで言うと「ダークファンタジー」にカテゴライズされるみたいなんですが、ところどころリアルな演出があると思ったら、「そりゃねえだろ!」とひっくり返るような演出もある。

そのバランスを楽しめる人もいれば、ダメだと感じる人もいるはず。

『散歩する侵略者』で言うと、一家惨殺事件という凄惨なサスペンスが横たわっていながら、同時に「真ちゃん」のカ噛み合わない珍道中を面白おかしく描くコメディも進行する。

そして後半は怒涛の……というより”イッちゃってる”展開で、観客は「行くとこまで行っちゃった世界」に圧倒されて、最後は「何かようわからんけど良いものを観た」という気持ちに落ち着く。

黒沢清監督作品を楽しめるかどうかは、これにのれるかどうかだと思います。

本作はとくに黒沢清監督の目には世界がどう写っているか、人間をどう見ているかが色濃く反映されていましたね。

中盤の桜井のセリフ「明日地球が侵略されるって聞いても、お前らの反応なんてそんなもんだよな!!」なんてまさに監督の本音なのかも。

そういった視点で『散歩する侵略者』を観ると、黒沢清監督の頭の中を覗いているような感覚で楽しめそうですけどね。

 

松田龍平の「容れ物感」

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宇宙人に体を乗っ取られる桜井真治役の松田龍平、最高でした。

以前から独特の雰囲気を持つ俳優さんだと思ってまして、『舟を編む』のマジメ役とか大好きなんですよね。

彼独特の目に生気が宿ってない(褒め言葉)佇まいが、まさに「宇宙人の容れ物感」。

生きているんだけど生気がない役者って、そうそういないですよ。

これが松木安太郎だったら絶対に侵略されなさそうじゃないですか。松木さんはサッカー解説者だけども。

松田龍平だからこそ演じられた「シンちゃん」だったと思いますね。

 

本作の気味の悪さは演者の「イッてる目」

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僕が黒沢清監督の作品が好きなところとして、「背筋にぺっとりとまとわりつくような感じの気持ち悪さ」があります。

今回まず最初にヤラれたのは、もうド頭の金魚すくいのシーン。

こちらが身構えているからかもしれませんが、もうこれだけで「なんだか気味が悪い」となるわけですよ。

続く「一家惨殺事件で唯一生き残った若い娘」って設定でもう「ウワー!黒沢清映画観てるぜ!!」という多幸感を味わう。

「血の海でバタつく金魚」なんて最高じゃないですか。

オープニングからたっぷり”黒沢清節”なるものを味わったところで、本作でずっと気になっていたのが演者の「目」の演技ですね。

冒頭の病院の鳴海が真治と面会するシーンからそれは顕著で。

雑誌を逆さに読み、妙な丁寧口調で話す真治という気味の悪さもあるんですが、それよりも立ち会っていた医者の「目」が怖い。

なんかね、もうイッちゃってるんですよ。

別におかしなところはないんだけど、目に光がないというか、目の奥の闇が深いというか。

同じく目が特徴的だと思ったのは、満島真之介演じる引きこもりニートの丸尾くんですね。

真ちゃんとの噛み合わないやり取りは劇場が爆笑に包まれるほどでしたが、「概念を奪われ」てからの目はどこかイッている印象。

これが確信に変わるのが、東出昌大演じる牧師ですね。

愛という概念を知りたがる真治に愛を説くわけですが、そのときの目がまた怖い。

完全に目がイッてる。

口元は口角が上がって笑っているようなのに、目は笑っていない。

牧師なのに、それじゃ子供たちが泣いちゃうだろ、と。

どうやら東出昌大くん本人も、共演者から「目が笑っていない」とネタにされているようなのですが。

これはもう、意図的な演出だと感じましたねえ。

他にも背筋がヒヤッとするような気味の悪い演出がところどころあるので、ぜひ体感していただきたい。

 

愛は地球を救う!エンドロールに”サライ”を聴け!!

『散歩する侵略者』の宇宙人は人間の脳と体を乗っ取り、人間の思考から「概念を奪う」という斬新な侵略方法で地球の制服をもくろんでいます。

たとえば、宇宙人に「家族」という概念を奪われた人間は、頭のなかから「家族」という概念がすっぽり抜け落ちてしまうため、肉親に対して他人のような接し方をするようになる。

超兵器によるドンパチの侵略とは違い、非常に恐ろしいというか、黒沢清監督好みの設定というか。

最初に偵察部隊として送り込まれた宇宙人たちは、真治、天野、立花あきらの3人の体を乗っ取り、ある程度の概念を集めたら地球に侵攻するかどうかを決定するんですが、そこでカギとなるのが「愛」の概念なんですね。

 

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ネタバレを恐れずに言うと、けっきょく宇宙人は地球を侵略しなかった。

その理由は、人間の愛の概念を知ったから。

これってまさに、「愛は地球を救う」じゃないか!

『散歩する侵略者』は日本テレビ製作の映画だし……

気付いたときはシートからひっくり返りそうになりましたね。

エンドロールでは”サライ”が流れるんじゃないかとヒヤヒヤしましたよ。

今年の24時間テレビは一切観ていませんが、僕は『散歩する侵略者』でまたひとつ愛が地球を救った瞬間を見届けることができました。

www.youtube.com

 

流れてゆく 景色(エンドロール)だけを じっと見ていた

 

というわけで、まとめ

もうひとつ黒沢清監督作品の特徴というか、僕が好きなところを挙げておくと、女優さんの演技や撮り方がとても魅力的。

今回は長澤まさみ演じる鳴海がとても良かったですね。

夫の奔放さに疲れた人妻が、宇宙人のおかげで夫への愛情を取り戻していくお話として観ると、また長澤まさみがいじらしいんだ。

最後は間接的にではあれど、夫への愛で地球を救っちゃうわけで。

『散歩する侵略者』の前半はコメディタッチで大いに笑わせてもらえますし、そこまでクセの強い作品ってわけでもないので、黒沢清作品童貞の方にもおすすめしたい一本です。

 

まだまだいくぞ~~~

 

 

『新感染 ファイナルエクスプレス』は、新たなゾンビ映画×ここは俺に任せて先に行け!の金字塔である!

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こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。

今回取り上げる映画は『新感染 ファイナルエクスプレス』。

いつもの立川シネマシティのaスタジオ、もっとも音響の良い劇場で観てきましたよ。

公開前から映画ファン界隈では「今年ナンバーワン」の呼び声が高かった本作、TOHOシネマズ系列では上映されていません。

それでも日本国内で上映される韓国映画で、この規模はなかなかないんじゃないでしょうか。

ではでは、感想&レビューへとまいりましょう。

いつものようにネタバレしてるので、鑑賞後の閲覧推奨です。

 

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映画『新感染 ファイナルエクスプレス』

youtu.be

公式サイト:http://shin-kansen.com/

【原題】부산행

【日本での公開】2017年9月1日

【上映時間】118分

【監督】ヨン・サンホ

【脚本】ヨン・サンホ

【出演】コン・ユ、チョン・ユミ、マ・ドンソクほか

 

Yahoo!映画の評価平均点 4.07点

Filmarksの評価平均点 4.0点

僕の評価は100点中 83点

 

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さらっとあらすじを

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ソウルで働くファンドマネージャーのソグは、一人娘のスアンと共にプサンに住む離婚した妻に会いに行くため、韓国高速鉄道(KTX)に乗り込む。

そこには、同じく身重の妻を気遣いながらソウルへ向かうサンファ・ソギョン夫妻、高校の野球部のソングクとガールフレンドのジニらが乗っていた。

そのKTX車内で突如起こる、原因不明の感染爆発。

噛まれた者は凶暴化し、見境なく周囲の人間を襲うようになる。

乗るも地獄、降りるも地獄のゾンビ列車がプサンへ向けて疾走する!

 

ハリウッドの「お家芸」にアジアのゾンビが殴り込み!

ゾンビ映画と言えば、数年前までアメリカ・ハリウッドの専売特許のようなところがあったと思う(香港映画には不朽の名作『キョンシー』シリーズがあるが)。

ところが昨年、「日本人が作るゾンビ映画なんて……」という下馬評を見事に覆し、『アイアムアヒーロー』という無類のジャパニーズゾンビ映画が爆誕した。

それに続いて新たなゾンビ映画の金字塔を打ち立てたのが、本作『新感染』だ。

韓国高速鉄道KTXを舞台に、凶暴な感染者と乗客たちの生き残りをかけたデスロードが幕を開ける!

 

高速鉄道の密閉空間×ハイスピード系ゾンビの相性の良さたるや!

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車輌のどこにも逃げ場はない、降りたところで安全地帯もない。

密閉空間の緊張感と後戻りできない絶望感は、まさに「地獄行きの棺桶」。

その中で繰り広げられるサバイバルと、悲喜交交(ひきこもごも)の人間模様。

家族よりも仕事を優先するダメ父親とその娘。

ただの足引っ張りに見えるホームレス。

おすぎとピーコのような訳あり?老姉妹。

「リア充氏ね」とは死んでも言えない野球部の高校生カップル。

「とにかく死ね」と言いたくなるバス会社の専務……

そんな一癖も二癖もある登場人物たちが、未曾有のゾンビパニックにそれぞれの立場で立ち向かい、人間的に成長する者もいればゾンビよりたちの悪い者もいる。

とくに本作は、観た人だれもが背中に「漢」を見たマ・ドンソク演じるサンファに言及せざるを得ないだろう。

ゾンビ戦ではまるで軍人か格闘家かと思うような戦闘力を発揮し、素手一本でゾンビを屠っていく姿に惚れ惚れする。

しかも、ただのパワータイプではなく、本作でもっとも血の通った人間味のあるキャラとして描かれている点にも注目だ。

同じく身重ながら最後までスアンを守った、サンファの妻ソギョンの姿にも胸が熱くなる。

 

ゾンビ映画の楽しみは「攻略法」にあり

『アイアムアヒーロー』もそうだったが、得体の知れないゾンビに攻略法を見出すシーンこそ、昨今のゾンビ映画の醍醐味と言えるだろう。

中盤、ゾンビたちは「どうやら鳥目(暗闇で目が効かない)らしい」「音に反応するらしい」ということがわかる。

そこからソグ・ヨングク・サンファの3人が、愛する者たちが助けを待つ別車輌へ。

ゾンビをかいくぐって車輌から車輌へ移動するシーン、これがまたアガるアガる。

ほとんど唯一といっていい、BGMも軽妙なものになり、素手でゾンビを屠るサンファを先頭に3人はゾンビの群れを突破していく。

ここで大活躍するのが野球部の「バット」である。

バットの対ゾンビ兵器としての有用性が遺憾なく発揮されるシーンは非常に清々しい。

やはり対ゾンビ兵器はシンプルに「鈍器」でなくてはならない。

飛び道具など甘えである。

 

ここ(KTX)は俺に任せて先(プサン)に行け!

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ソグ・ヨングク・サンファの3人が快進撃を見せるも束の間、ある人物の心無い行動により事態は最悪の展開へ。

まあこいつが本当にクズで役立たずで悪人面で最高なんだけど。

さあここから、怒涛の「ここは俺に任せて先にいけ!」展開ですよ。

ゾンビがハリウッドのお家芸なら、「ここいけ」はアジア映画のお家芸。

『新少林寺/SHAOLIN』や『孫文の義士団』などに代表される、最高に辛くて最高に燃える展開である。

 

どうやら終点であるプサンに到着すれば、助かる道があるという展開に。

ただしこの『新感染』、主要キャラだろうが(観客から)愛されキャラだろうが、容赦なく殺しにかかる。

「なんでこいつに死亡フラグ立てんだよ!!」と、心が乱されること必至。

ひとり、またひとりと、命を次に繋ぐため自分を犠牲にする姿に、映画館からもすすり泣く声が……

これだよ……

ゾンビ×ここいけ!

最高じゃあねえか!!

 

唯一の回想シーンで思ったこと

細かいところなんだけど、ひとつツッコませて!

多くの観客が涙したであろう(実際にあちこちからすすり泣きが)、ゾンビ化するソグが薄れ行く意識のなかで見た、生まれたばかりのスアンを抱いた記憶。

これ、本作で唯一の回想シーンなのだが。

観る前から懸念と言うか思っていたのが、「人が死んでいくときにいちいち回想が入ったらテンポ悪くなるなあ」ということ。

完全に好みの問題なのだけど、こういったパニック映画で回想シーンを差し挟むことは、個人的に悪手だと思っている。

テンポが崩れるし、途端に「あ、いま映画観てるんだ」と現実に引き戻されるようなカンジがするのだ。

できれば、回想シーンなしで本作のクライマックスとも言えるソグの黄昏を演出してほしかった。

たとえば、だ。

ソグが最後までスマホを手放さなかったとして、回想の代わりにスマホに保存されているスアンの誕生ビデオを観るというシーンだったら……

個人的には好きな展開になっていたかもしれない。

貨物車から飛び降りるシルエットも、進行形で見せるよりは結果だけでよかった。

先ほどのスマホ演出を引き継いで、「地面に落ちたスマホが電池切れになる=テグの命が尽きる(ゾンビ化する)」という演出に差し替えてみると、どうだったろうか。

 

絶望と希望が交錯するラスト

『新感染』でもっともスクリーンに釘付けになり、手に汗握ったシーンがラスト。

「これでメデタシメデタシ、なんて生易しいもんじゃないだろう」という、観客の心理を実に巧妙に操るのである。

「射殺を許可する」の字幕がスクリーンに映し出された瞬間、劇場のどこからともなく「えっ、うそ……」という声が漏れ聞こえてきた。

 

わかるよ、その気持ち!俺も一緒だ!!

 

周りに聞こえんばかりの、心臓の鼓動がドキドキ。

あのシーンはもう……ここ最近では久しぶりに絶望を感じた瞬間だった。

この映画、容赦なく主要登場人物を殺しにかかる冷徹さがあるが、最後の最後まで本当に気が抜けない。

だが、このラストシーンの演出が実に……実に最高だった!

仕事の虫で自分のことしか考えていないけど、それでも大好きなパパのためにスアンが歌った歌。

最後に二人を救ったのは、肉体は滅んでも娘を守り抜きたいという、ソグの情念だったのだろう。

同じくサンファも、妻のソギョンのお腹にソョンを託して死んでいった。

本作の舞台である鉄道のように、このラストは二人の意志が、生き残ったスアンとソギョンを絶望から希望へとつないだ瞬間なのだ。

 

というわけで、まとめ

非常に個人的なことではありますが……

鑑賞後に居てもたってもいられず、知り合いの映画好きの女性にアツく語ったんですよ。

「『新感染』はいいぞ!」と。

そしたら返ってきた答えがこれ。

「わたし、ゾンビが一番苦手なんですよね~」

 

まあ、ゾンビ映画、ホラー映画が苦手な方は多いと思います。

それでもねえ、『新感染』だけは観てほしい。

ゾンビ映画食わず嫌いの方々に僕が言いたいのは、新日本プロレスの内藤哲也選手のこのひとことですよ。

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僕自身は、エンドロール後にどっと心地の良い疲れがくる、そんな鑑賞後感でした。

人間の業をまざまざと見せつけられて、心がズキズキもするけど、最後の最後はあたたかい。

さらに言うと、帰りの各駅停車の電車に乗ってても、隣の車輌に感染者がいるんじゃないかとソワソワしてしまう始末。

現実世界でも余韻を引きずる映画って、やっぱ良い映画なんですよ。

個人的にはゾンビモノに「ここは俺に任せて先に行けモノ」が実に見事にミックスされた、新たなゾンビ映画の傑作と言える作品です。

 

こちらもおすすめ『アイアムアヒーロー』

 

「ここいけ」映画の金字塔といえばこちら

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モヤモヤを感じざるを得ない「月間40万PV達成するための映画やドラマのレビュー&感想の書き方」

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こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。

ライターブログに書こうか、こっちに書こうか迷った挙句こちらに。

 

書こう書こうと思ってとうとう1週間以上経ってしまいました。

これねえ……他に映画ブログを書いている人はどう思うんだろう。

僕はこのTweetをタイムラインで見かけたときは、正直吐き気がしました。

あなたは「月間40万PVを達成するために映画ブログを書くのですか?」と。

好きに書けばいいよと思う反面、このタイトルには心底モヤモヤするなあ。

 

「PV数が多い=面白いブログ」じゃないよね

すごく上からの言い方になりますが、この方の『ゲーム・オブ・スローンズ』の感想などはすごく良いと思いますよ。

しっかりボリュームもあるし。

観てる人にとっては、たしかに共感できるところも多いと思う。

でも映画の感想が「本当に観たの?」というレベルでお粗末なのが気になる。

僕の大好きな映画である『ドント・ブリーズ』の感想とかマジでヒドいな。

www.realoclife.com

 

これに★16とか信じられねえよ……

つくづく★の数なんて当てにならないなあと思う。

ちなみに僕が書いた『ドント・ブリーズ』の記事はこちら。

www.motomurahajime.com

まあそれはいいとして、本題へ。

 

またつまらぬブログが増えてしまった……

「月間40万PV達成するための映画やドラマのレビュー&感想の書き方」ですけど、内容自体は間違ってないと思うんですよ。

「文章は簡単に分かりやすく」もそうだし、「好きか嫌いか、率直に述べる」も正しいと思う。

「映画のレビューの構成は、あらすじ・キャスト・感想の3本柱」あたりから「ちょっとそれどうなのよ?」という感じが。

これをそのまま真似して書いているブログ、量産されすぎてるんですよねえ。

ハッキリ言うと、型にはまった映画ブログなんてつまらない。

個性がないというか、熱を感じないというか。

感想というより、あらすじなぞってるだけじゃねえかとツッコミたくなること多いし。

それに「こうすると読者は喜ぶよ」っていうアドバイスにモヤモヤを感じる。

たしかに読者にとって有益な情報だったり、読みやすさだったりは意識して書いたほうがいいでしょう。

その前にさあ、あなたの感想は?映画を観たときの感情は?それが読みたいんじゃないの?

なんかこれに通じるものがある。

 

しかもGoogleが評価してくれるのかどうかわからないけど、型にはまった映画ブログが下手に検索上位に来ちゃうのもつまらなさを助長してると思う。

そもそも件の筆者が「素人の主婦が語る、PV30万&収益10万を達成するためのブログの書き方」とか書いちゃう方だから、映画もドラマもPV数アップ、収益アップの道具なのかなあなんてね。

となると、「映画やドラマのレビューだけ」で40万PVいってるかは定かではないなあ。

ブログ&Webカテゴリの記事も……まあプロブロガー諸氏がよく書いてるような内容が並んでいるし。

なんかすいません、ホントすいません、偉そうに。

 

稼ぐためのブログよりトガッたブログ

僕も以前はPV数を意識したブログづくりをしてましたし、あらすじやキャラクター説明にやたら時間をかけてたりました。

その結果、一時期はブログを書くのが億劫になってましたね。

自分らしさが出ていない感じがして。

だから、「映画ブログで稼ぐ方法」みたいな記事を見ると、過剰反応しちゃうんでしょう。

今はもう、PV数なんか気にしない。

「自分が何度も読み返したくなる記事を書く」

これが僕にとってのモチベーション。

「映画を観た後のファミレスでペチャペチャしゃべってる感じ」

これが僕のブログのスタイル。

だから僕は、読者が喜ぶ記事よりも、トガッた記事が書きたい。

僕が一方的に敬愛している三角絞めさん豆みつおさんの映画の記事を読んでみてくださいよ。

こんなにトガッてて、個性的で、面白い記事を書きたい。

 

一線は越えていません

「40万PV達成するための~」の記事を見たときに想像したんですよ。

もしも、ライムスターの宇多丸さんが『聴取率を稼ぐための映画批評テクニック』なんて本を出したら、たぶんラジオ聴かなくなるなあと。

良くも悪くも、件の筆者の方はプロブロガー志向なのかもしれません。

それはそれでアリ。

だけど僕は、PV数でマウント取り合うプロブロガー界隈からは一線引きたいですね。

映画のブログは好きに書けばいいんだけど、PVや収益が目的になると途端につまんなくなるから。

月間何万PV稼いでようが、面白いってわけじゃねえから。

 

自分で言うのもナニだけど、過去に良い記事書いてたわ。

www.motomurahajime.com

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映画『ワンダーウーマン』感想とレビュー。「一人で眠れない女」も、「美しく、ぶっ飛ばす」もない

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こんにちは、もとむらはじめ(@motomurahajime)です。

今回あつかう映画はDCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)の4作め、待ちに待った『ワンダーウーマン』でございます。

いつもの立川シネマシティで、公開初日の初回で観てきました。

平日にもかかわらず、一番大きなシネマ・ツーのa studioがほぼ満席。

若いカップルから熟年のご夫婦まで、幅広い客層で埋められていたのが印象的でした。

日本でのプロモーションが噴飯モノだったらしいですが、映画本編は果たして。

 

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映画『ワンダーウーマン』

youtu.be

公式サイト:http://www.spiderman-movie.jp/

【原題】Wonder Woman

【日本での公開】2017年8月25日

【上映時間】141分

【監督】パティ・ジェンキンス

【脚本】アラン・ハインバーグ

【出演】ガル・ガドット、クリス・パイン、ロビン・ライトほか

【あらすじ】人間社会から孤立した女性のみの一族のプリンセスとして生まれたワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、自分が育ってきた世界以外の環境を知らず、さらに男性を見たこともなかった。ある日、彼女は浜辺に不時着したパイロットと遭遇。彼を救出したことをきっかけに、ワンダーウーマンは身分を隠して人間社会で生活していくことにする。(シネマトゥデイ)

Yahoo!映画の評価平均点 3.68点

Filmarksの評価平均点 3.9点

僕の評価は100点中 60点

観る前はかなり楽しみにしていました。

前評判も良かったし、なにより『バットマンVSスーパーマン』のワンダーウーマン登場の衝撃といったら。

それで公開初日に喜び勇んで観に行った結果、僕の感想は......

ガル・ガドットが息を呑むくらい美しかった。

クリス・パインが今までで一番良かった。

それ以上でもそれ以下でもない。

 

たしかにねえ、多くの感想が「ワンダーウーマン美しい!可愛い!」「今回のアクションすごい!」の一辺倒なんですよ。

内容の良し悪しに振れる感想はわりと少数派というか。

同じDCEUの『スーサイド・スクワッド』と似たような現象ですね。

「ハーレクインがエロくて可愛い」という感想しかない、という……

それでも、楽しいところは楽しかったし、ベタだけど涙を誘うシーンもありました。

劇中のある人物の「僕は今日を救う 君は世界を救え」は、映画史に残る名言だと思いますし。

ではでは、感想・レビューへとまいりましょう。

 

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ガル・ガドットは「イスラエルの至宝」

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どの映画ブログでも必ず言及されてるでしょうから、手短に。

ガル・ガドットが美しい。

しかも二児のママでイスラエル軍の兵役に服してたんだもの。

ご本人こそがワンダーウーマンですよ。

どんなに暗い場面、凄惨な場面でも、彼女が登場するだけでスクリーンがパッと華やかになる。

隣に座っていた女性が、ダイアナの初登場のシーンで思わず「わぁ……」ってつぶやいてたくらいですから。

登場するだけでうっとりしちゃうような女優さんなんて、何年ぶりだろう。

 

『007 カジノ・ロワイヤル』でもおなじみマッツ・ミケルセンを「デンマークの至宝」と言うそうですが、だったらガル・ガドットは「イスラエルの至宝」ですね。

あのナタリー・ポートマンを生んだ美人大国イスラエルの至宝ですから、そりゃあ女神級ですよ。

 

クリス・パイン史上最高のクリス・パイン

これも多くの方が言及されてますが、『ワンダーウーマン』のクリス・パインは、史上最高のクリス・パインでした。

よくネタにもされてますけど、クリスと名のつく売れっ子ハリウッド俳優は4人。

クリス・プラット

クリス・エヴァンス

クリス・ヘムズワース

クリス・パイン

そのなかでもクリス・パインは……

まあMCUの世界的大ヒットもあって、どちらかと言うと「クリス四天王」の四番手でしょうか。

僕自身そんなに「クリス・パイン大好き!」 みたいなこともなくて、他の3人に比べて地味な印象でした。

それで今回の『ワンダーウーマン』にトレバー大尉として登場したクリス・パインは……

クリス・パイン史上、最高のクリス・パインでした。

『スタートレック』のカーク船長の何倍も魅力的!

国のために命を捧げる崇高な軍人でありながら、おちゃめでロマンチストな一面もあるトレバー大尉を見事に演じていましたね。

間違いなく当たり役!

 

カルチャーギャップコメディの面白さよ

『ワンダーウーマン』は大きく分けると3部構成なのかなと。

1、アマゾン族の聖地セミッシラ編

2、ロンドン編

3、最前線編

そのなかでも、カルチャーギャップコメディとしても楽しめる「ロンドン編」は、これまでのDCEU作品にはない面白さ、笑いどころがありました。

ガル・ガドットの美しさと可愛らしさが臨界点を超えるファッションショー、ツッコミ役のエッタとトレバー大尉のやりとり。

何よりもダイアナとトレバーのムズキュンシーンに、ニヤニヤが止まらない!

ここだけを切り取れば、もう至福ですよ至福。

 

まだご覧になっていない方の期待を煽る、内藤哲也選手の言葉がこちら。

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この「一服の清涼剤」のようなコメディーシーンがあるからこそ、後半からの凄惨な「最前線編」がグッとくるんですけどね。

ただまあ……ちょっと残念なところもチラホラと。

以下、ネタバレも含みます。

 

戦神アレスに一同「おまえ誰だよ!?」

本作の一番の問題じゃないでしょうかねえ。

ラスボスとなる戦神アレスの正体、おそらく観ていた人の多くが思ったはず。

「おまえ誰だよ!?」

『ファイナルファンタジーIX』のラスボス「永遠の闇」が登場したときの心境に似ているかと。

もちろんね、戦神アレスが誰かに化けて潜んでるのはわかるんですけど、なぜお前なんだと。

これって、映画観ててシラケる「実はあのときこうだったんじゃ」「実はワシが◯◯だったんじゃ」っていう、後付けパターンじゃないですか。

さらに言うと、なぜ最前線にいるのかと。

もっと丁寧に伏線を張ってほしかった……あまりに唐突すぎるんだもの。

まあたしかに「なんでこのジイさんはトレバーたちに協力的なんだろう?」とは思いましたけど、まさか戦神アレスだとは1ミリも思わなかったし、1ミリも疑わなかったからこそ返って「急に出てきてお前なんだよ!」ってなっちゃったですよねえ。

パトリック卿(正体はアレス)が初めてダイアナを観たときにいぶかしげな顔をしていたような気もするけど、あれで伏線とするには印象が薄すぎる。

 

たとえばダイアナがロンドンの会議場に初めて姿を現したときに、「人間じゃない何者かがいる」みたいな反応をしてくれれば、もう少し伏線にはなったかも。

そういうのが観客にほとんど示されず、いきなり終盤に取ってつけたような登場の仕方をするからポカーンとしてしまう。

「実は裏でドイツ軍と暗躍してましたと」か、目に見えて悪そうなことしてくれないと、アレスである必然性も、戦場の最前線にいる必然性もないんですよね。

そういうのも「だって神様だもーん」で済まされちゃうとモヤモヤするんですけど。

 

もうひとつツッコんでおきたいおきたい点としては、戦神アレスが鎧をまとった姿ですね。

ギリシア神話を題材にしたゲームや映画に触れたことのある人なら、思ったんじゃないでしょうか。

「アレスというよりハーデスじゃねえか」

僕はアクションゲームの『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズが好きなもので、アレスの鎧姿が冥王ハデスに見えてしかたなかったですね。

ちなみに、『ゴッド・オブ・ウォー』の冥王ハデスはこちら。

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トレバー隊よ、個性を活かせ!

トレバー大尉とその仲間たち。

個性的なキャラクターたちが揃ってましたが、もっと個性を活かしてほしかったなと。

活躍したのは多国語を操るサミーアくらいかな。運転手に扮して検問を突破するシーンは面白かった。

でも、それ以外のキャラクターはというと……

 

たとえば狙撃手のチャーリーは、ここぞというときに射撃ができない。

だったら、最後の最後に『ダイ・ハード』のパウエル巡査並の感動シーンを持ってくることもできたのではないか。

もっと勿体無いのはトレバー大尉の秘書・エッタ。

あんなに面白いビジュアルとキャラクターしてるのに、カルチャーギャップコメディのツッコミ役だけで終わるとは。

中盤から彼女はパトリック卿(アレスの人間体)と一緒に残るわけじゃないですか。

アレスの正体に気づき、トレバーに連絡することもできたんですよ。

そんな大仕事を任せてもよかったのに、中盤以降これといった活躍の場が与えられなかったのは本当に勿体無い。

 

クライマックスはやっぱりそうなっちゃうよねえ

登場するだけでスクリーンに華やぐ、ワンダーウーマンのアクションシーンはどれも素晴らしかったのですが、クライマックスがねえ……

『マン・オブ・スティール』のときもそうでしたけど、やっぱり超人同士が戦うと戦闘力のインフレが起きてワンパターン化してしまいますよね。

相手の必殺技よりも強力な必殺技で倒す。

『ドラゴンボールZ』なんかでありがちなパターンです。

 

「クリリンのことかーーー!!」じゃないですか、ワンダーウーマンの覚醒って。

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やっぱり、勝つには勝つなりのロジック「なぜ勝てたのか」「何が原因で(敵側が)負けたのか」がほしい。

「ゴッドキラーはお前だから」は確かにそうなんだけど......

 

「ひとりで眠れない女」も、「美しく、ぶっ飛ばす」もない

公開前の炎上騒動?について思うところを。

www.excite.co.jp

『ワンダーウーマン』の日本版イメージソング、乃木坂46の「女は一人じゃ眠れない」の歌詞が、「秋元!お前本編観てないだろ!」レベルのまったく的外れだったことで炎上。

これはもう多くの映画人が批判してましたし、観る前から想像が付いていたことですが……

もちろん、一人で眠れない弱々しい女は一人たりとも出てきませんでした。

 

さらに、実際に本編を観てもうひとつ確信したことがあります。

キャッチコピーの「美しく、ぶっ飛ばす」も的外れ。

 

ガル・ガドットという、イスラエルの至宝が演じるヒーローだからって、「美しく、ぶっ飛ばす」ってコピーはあまりに安直にすぎる。

これはアクションが「美しくない」「汚い」というわけではないですよ。

ガル・ガドット演じるワンダーウーマンはそりゃあ美しかったですし、パティ・ジェンキンス監督の女性監督ならではの視点で描かれる、スーパーヒーローの姿も新鮮でした。

でも、映画の舞台は第一次世界大戦の最前線、兵士が酷い死に方をする場所。

『ワンダーウーマン』にも、戦傷によって手足を失い、戦闘ストレス反応を引き起こす兵隊たち、毒ガスで殺される無辜の民が大勢出てきます。

そんな凄惨な戦場で戦うワンダーウーマンを観て、「美しく、ぶっ飛ばしてんなあ」と痛快さを感じるシーンはひとつもなかったですね。

かっこいいし、美しいんだけど、ワンダーウーマンの戦いには悲痛さすら感じました。

 

彼女がどれだけドイツ軍をぶっ飛ばそうが、人間は戦争を止めないから。

後半は『ダークナイト』に匹敵するくらのダークさがあったと思いますよ。

キャッチコピーは日本の観客に訴求するために、文字通り「キャッチーな」コピーであるべきなんでしょうけど、一時期の「全米が泣いた」レベルの、残念なコピーが未だにまかり通ってるのは如何ともしがたい。

 

というわけで、まとめ

間違いなくスクリーンを縦横無尽に駆け巡るガル・ガドットは美しい。

クリス・パインは彼のキャリア史上最高の仕事と言えるくらい、トレバー大尉は魅力的だった。

たしかにこれまでのDCEU作品の中では飛び抜けて面白かった。

もどかしいところは数々ありますけど、それをカバーして余りあるガル・ガドットの美しい戦さ姿で、十分に元は取れるんじゃないでしょうか。

3ヶ月後にはいよいよ『ジャスティス・リーグ』が公開ですし、『ワンダーウーマン』単体での続編も予定されているとのこと。

DCEUのアクションとストーリーの進化、どっちも気になるからこれからも観に行きます。

 

観てなくても楽しめるけど、鑑賞自体はオススメ

 

ハーレクインがとにかくエロくて可愛い

 

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